LGBTカップルに立ちはだかる「住まい選び」の壁 金融機関の理解徐々に深まりローン組みやすく

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「ペアローン」とは、2人がそれぞれに住宅ローンを借り、互いに連帯保証人となるもの。「収入合算」とは、2人の収入を合算した額を収入として認め、その収入に対して借入額の上限を審査するもの。単独で借りるよりも借入額を増やすことができる。

また、収入合算には「連帯保証型」と「連帯債務型」があり、一般的に連帯保証型のほうが多い。連帯保証型は、収入合算する人が住宅ローンを借りる人の連帯保証人となり、借りた人が返せないときに返済が請求される。住宅の名義も住宅ローン控除の対象になるのも、借りた人だけとなる。一方連帯債務型は、収入合算する人も借りる人と同じように返済の義務を負うので、共有名義にしたり住宅ローン控除を利用したりできるなどの違いがある。

ペアローンや収入合算が利用できない場合、どちらが単独で住宅ローンを借りて購入し、実際には2人で返済をしていくことになる。しかしその場合には、住宅ローンを借りていない人の返済額が、家賃として出されたものなら「不動産所得」として、資金援助として出されたものなら「贈与」として、いずれも借りた人の課税対象になってしまう。

このようにLGBTのカップルの場合は、家を借りるのも買うのも、いろいろなハードルがあって、借りづらい、買いづらいという事態を生じさせているのだ。

LGBTの住まい探しを支援する不動産会社も

では、LGBTカップルはどのようにして、住まい探しをすればよいのだろう?

LGBTの住まい探しを積極的に支援している三好不動産(福岡市)に話を聞いた。同社ソリューション事業部 執行役員 堂脇善裕さんによると、正しい知識をもってきちんと契約をすることが大切だという。

三好不動産では、これまでも高齢者や外国人被災者の住宅支援や、DV被害者の住まい探しなど、状況に応じたさまざまなニーズに積極的に取り組んできた。LGBTへの取り組みもそうした延長上にあるという。同社では、2016年からLGBTの賃貸住宅のあっせんに力を入れ、貸主となる不動産オーナーへの啓蒙活動を行ってきた。

貸主が同性カップルの同居を認めるようになれば、同居人としてパートナーを申請し、火災保険などに加入するという、正規の手続きを踏むことができる。カップルはその後も安心して暮らすことができるし、不動産会社も正規の契約を仲介でき、貸主も入居者が決まるというWin-Winの関係が築ける。

三好不動産のそうした取り組みのなかで、LGBTカップルでマイホームを持ちたいという要望を聞くようになり、購入支援にも力を入れるようになった。2019年からは「LGBTライフプランセミナー」を開催しており、1回目のセミナーには約60名の参加があった。

コロナ禍でオンラインの開催に切り替えるといった影響もあったが、2021年4月には4回目のセミナーを開催(約30名参加)している。

福岡市が2018年から「パートナーシップ宣誓制度」を設けて宣誓書受領証の交付をしていることもあり、LGBTライフプランセミナーは福岡市の後援も得ている。セミナーの内容は、次のようなものだ。

・福岡市のセクシャルマイノリティー支援について
・住宅購入や住宅ローンについて
・パートナーのための生命保険について
・司法書士によるLGBT のための公正証書とその手続きについて
次ページ公正証書まで踏み込んで説明するワケ
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