コーセーが「販売の仕組み化」で成果を出せたワケ 営業利益67%減、コロナ禍の逆境にDXで攻める
コーセーがEC展開を本格化させたのは2018年。小椋率いるIT部門とデジタルマーケティング部門がタッグを組んだDXプロジェクトの一環だ。ブランドが確立しているコーセーでも、EC化すれば自然と売上が伸びるというわけではない。ネット上にECサイトはごまんとある。
新規顧客は取り合いで、いかにリピーターを増やすかが焦点となる。コーセーは、戦略的なマーケティング展開を見据え、CRM(Customer Relationship Management 顧客情報管理)システムの整備に乗り出した。コーセーのEC顧客に個別のユーザーIDを付与し、属性や購買履歴などを管理する。
しかし、プロジェクトメンバーの進藤広輔は、「当初はDXできる状態になかった」と振り返る。DXには、大きく2つのステップがあると言われている。デジタイゼーションとデジタライゼーションだ。デジタイゼーションとは、デジタル技術によって業務効率化やコスト削減を実現することを指す。
デジタライゼーションは、デジタル技術によって自社のビジネスモデルを変革し、新たな価値や顧客体験を創出することだ。目指すDXは、デジタライゼーションの先にある。つまり、一足飛びにDXはできない。進藤は、「まずはデジタイゼーション。物事をきちんと数字で追えるようにしましょう。データ化されていないものはデータ化し、それを蓄積するところから始めましょう」と呼びかけた。
「仕組み化」で見える新たな気づき
データ化されていないものの代表格は、一人ひとりが持つ知識や経験だ。例えば販促。売り場では、顧客の服装やパーソナルカラー、なりたいイメージなど、複数の要素を掛け合わせて特定の商品を薦めている。だが、この算出ロジックが売場を横断して展開されることはなかった。
進藤は、売り方の工夫を仕組み化することにした。顧客の情報に加え、商品企画者の思いまでも数値化し、方程式を作り上げることで、誰でも一定レベルの販促が可能となり、数字をいじれば事前にある程度結果も見通せるようになった。
「化粧品に限らず、どのメーカーでも販促ロジックはあると思いますが、それがきちんと整備され、社内展開されているか否かが精度やスピードの差となって現れていると思います」
だが、なにもかも仕組み化されてしまうと個人の工夫や差別化が難しくなるのではないか。それって楽しいのだろうか。進藤は、「気づきやすくなること」が大きなポイントだと語る。
「個人の感性や感覚に頼ればユニークなものが出来上がるかもしれません。でも、周囲はもちろん本人でさえも、それ以上の気づきが得られないんですよね。ところが、方程式化すると、自分で操作できるようになります。1だった場合どうなるのか、2だった場合どうなるのか試す機会が増え、いろいろなことに気づきやすくなるんです」
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