コーセーが「販売の仕組み化」で成果を出せたワケ 営業利益67%減、コロナ禍の逆境にDXで攻める
仕組み化がクリエーティビティーをもたらすとは、筆者にとっても新たな気づきだった。
「人間って自分が知らなかった世界が見えると一瞬で顔がパッと明るくなるんです。それがだんだん周囲にも広がっていくのが今の僕の理想です」、進藤はそう言って目を輝かせた。人間の美しさは内面から滲み出るもので、メイクはそれを引き立たせるための手段にすぎないのだとすれば、進藤のアプローチこそ本質に近いのかもしれない。
IT部門と業務部門の一番いい関係
15年かけて地道にIT部門の存在感を高めていった小椋は、2021年春、所長として研究所に戻った。小椋の思いを引き継いだ進藤は今、組織変革に取り組んでいる。
「IT部門とか業務部門とか、組織が分かれている必要はないと思うんです。自分はシステム屋だとか営業だとか役割を限定せず、多様なスキルを持った人材がONE TEAM で何でもやる。ジョブディスクリプション(職務記述書)があれば管理はしやすいですが、その管理って、お客様のためになってますか?」
一方、進藤の理想を体現するチームも現れ始めている。例えば、化粧品が大好きで入社したある若手社員。配属先はIT部門だが、彼女が中心となって販売企画やBCの動き、商品のうたい文句まで考えている。逆に事業部側からも「こんなふうにシステムを使いたい」と声が上がり、前向きな提案が飛び交っているという。「お客様に最高のサービスを届け、自分たちも最高の体験ができる。それが理想のチームだと思うんです」
転職やコミュニティーを通じて幅広い人脈を築いてきた進藤は、社内外の人材をつなぐ役割も買って出ている。
「朝日新聞の広報とうちの広報を引き合わせたり、花王のIT部門とうちのIT部門を引き合わせたり、ローソンの店舗開発部とうちの事業部を引き合わせたり、先進的な外資系企業のオフィスを訪問させてもらったり。
みんな興奮して帰ってくるんですよ。自分より上だと思ってビビって行くじゃないですか。話してみると似たようなことで悩んでいて、仲間になれたり、自信がついたりするんですよね。変化を作り出して、新しいものにチャレンジしたくなるように仕向けているという感じです」
美容業界は厳しい状況にさらされている。しかし、逆境をチャンスに変えて、ONE TEAM で突き進む人たちがここにはいる。その人たちが作り出すメイクの力を借りて、私たちはまた少しだけ自分の可能性を信じてみるのだ。
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