実は高収益「日立の家電」冷蔵庫で知るその稼ぎ方 調整後営業利益率は日立全体の水準を上回る

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日立GLSは、空調事業でもリカーリング型ビジネスの確立に取り組んでいる。コネクテッド空調ソリューション「exiida(エクシーダ)」では、空調機器から収集したデータを基に、異常の兆候を早期に検出し、故障する前に点検や修理を実施。止めない空調を実現している。「医療機関や食品加工工場などでは、空調が止まることで、業務がストップしたり、損失が発生したりする。こうしたミッションクリティカルな領域で価値を提供できる」とする。

リカーリング型のビジネスへのシフトを進める日立GLSの谷口潤社長(筆者撮影)

日立が得意としてきたのは、いいものを作って、いいものを提供し、それを売り切るというビジネスだった。だが、日立GLSが目指しているのは、デジタルを活用することで、いいものを提供したあとにも、いいサービスを提案し、顧客とつながり、新たな収益の創出に結びつけることだ。

もともとITソリューション分野での経験が長い谷口社長にとっては、デジタルは土地勘がある領域だ。その経験から、「家電や空調は、デジタルの宝庫」と表現する。

「日立GLSは、日立グループの中では唯一生活者にダイレクトに接点を持っている企業。コネクテッドされた家電から発信されるさまざまなデータを基に、生活者の様子を知ることができる。これらのデータを、モノづくりに活かしたり、生活にまつわる新たなサービスの創出につなげたり、家庭内での健康促進のための提案などにもつなげられる」(谷口社長)

冷凍庫と野菜室を切り替えられる冷蔵庫を開発

すでにデータを活用した取り組みはいくつもある。

同社の冷蔵庫では、2つの引き出しの使い方を好みに応じて、冷凍室、野菜室に切り替えることができる「ぴったりセレクト」を搭載しているが、これは、年代によって生活スタイルが変わり、冷凍室や野菜室の収納量が大きく変化することを、データから捉えて開発したものだ。

「わが家でも、子どもが中学校に入ったときに、お弁当の作り置きのために、週末にまとめて作った食材を冷凍して保管することが増え、冷凍室の使用量が増加した。コロナ禍でも在宅時間の増加に伴い、冷凍食品の利用や食材をストックすることが増加し、結果として、冷凍室の使用が増えるという傾向が出ている」(谷口社長)

洗濯機では、汚れが多い場合などにはAIが洗い方を自動で判断するほか、洗濯機が好みの仕上がりを覚えてくれたり、洗剤や柔軟剤が足りなくなる前に、アプリが自動で発注してくれたりといったように、センサーとデータをもとに、家事の時短に貢献しながら、かしこく、きれいに洗濯する。

そして2020年12月には、家族型ロボット「LOVOT」を開発、販売するGROOVE Xとの資本業務提携を発表し、今後はロボット家電から収集するデータを活用して、健康に寄与するウェルネスサービスの創出や、家庭内の豊かさを生むためのサービスの創出にも取り組むという。

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