1日1万歩も必要ない?「歩数計」がもたらした誤解 健康維持のための合理的な歩数はどれくらいか

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つまり、1日の歩数が1万歩あるいはそれを超えても、歩数をより増やすことは人に害はなかった。ただし、歩数を増やしても、早期死亡を防ぐ効果もあまりなかったのである。

現実的には、1万歩の目標を達成する人はほとんどいない。最近の推計によると、アメリカ、カナダ、その他の西側諸国のほとんどの成人の1日当たりの歩数は、平均して5000歩にも満たないとされている。

歩数ではなく、「1日30分の運動」が理想的

また、たとえ1万歩の目標を達成したとしても、その偉業も一時的なもので終わってしまう傾向がある。ベルギーのゲントで行われたある有名な調査では、2005年に地元の市民に歩数計を配布し、1年間、少なくとも1日1万歩歩くよう促した。調査を完了した660人の男女のうち、最後まで1日1万歩の目標を達成したのは約8%だった。

しかし、4年後の追跡調査では、継続してそこまで歩いている人はほとんどいなかった。大半の人が標準的な水準に戻ってしまい、調査開始時とほぼ同じ歩数しか歩いていなかった。

幸いなことに、現在の歩数をほぼ毎日数千歩ずつでも増やしていくことは、合理的で、十分、そして達成可能な目標ではないかとリー氏は語った。アメリカなどの政府が公表している公式の身体活動ガイドラインは、歩数ではなく時間を用いることを提言しており、通常の日常生活の一部として動き回ることに加えて、1週間に少なくとも150分間、または毎日30分以上の運動を行うことを勧めている。

リー氏によると、歩数に換算すると、ほとんどの人が1週間に合計で1万6000歩強、ほぼ毎日約2000〜3000歩の運動をしていることになるという(2000歩はおよそ1マイルに相当する)。

多くの人のように、私たちが現在、買い物や家事などの日常生活で1日に約5000歩を歩いているとすると、2000〜3000歩を追加することにより、ほぼ毎日合計で7000〜8000歩の間となり、これが歩数の最適なレベルのように思われるとリー氏は指摘する。

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