口蹄疫拡大の惨状、緩すぎた感染対策
畜産農家はここ数年、採算悪化に頭を悩ませてきた。大半を輸入飼料に頼るが、トウモロコシなどの価格高騰で生産コストが上昇。一方、輸入肉との競争やリーマンショックの影響で販売価格は低迷が続く。多くの農家が負債を抱える中、「再開するにもマイナスからのスタートになる。子牛を育てて出荷するまで2~3年かかるため、この間は無収入。国は支援してくれるのだろうか」(JA尾鈴の松浦畜産部長)。
海外からウイルス侵入 日本の検疫は大丈夫か
宮崎の口蹄疫は対岸の火事ではない。「多くの国でウイルスが常在しており、完全に進入を防ぐことは不可能に近い」と、家畜伝染病に詳しい東京大学の山内一也名誉教授は警鐘を鳴らす。「どの地域で発生してもおかしくない伝染病だからこそ、発生時の迅速な対応に向けた危機管理システムが必要」と強調する。隣の中国や台湾では頻繁に発生している。海外からの旅行者が運んでくるリスクも考えて、現在の検疫体制を見直す必要はないだろうか。
ひとたび感染が広がれば、阻止するのは難しい。宮崎では、毎日10件程度の感染が確認されている。「畜産をやめる農家も出てくるだろう。何十年もかけて作ってきた宮崎ブランドはなくなってしまった」(JA尾鈴の松浦畜産部長)。同じ悲劇を、二度と繰り返してはいけない。
(前田佳子、麻田真衣 =週刊東洋経済2010年6月5日号/5月31日発売)
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