不祥事続発「ブルシットマネジメント」の深層

上層部の具体的な目標設定が組織の暴走を招く

映像の中盤で、ゴリラの着ぐるみを着た人がコートを横切る姿がはっきりとカメラにとらえられている。だが初めてその映像を見る人の大半は、ゴリラの存在にまったく気づかない。

具体的な目標の存在は、結果として誤ったふるまいを招きかねない集中力を生み出すが、それだけでなく、「暴走する目標」の筆者らによると、倫理に反する行動を実際に誘発しかねないという。

会社が具体的な戦略目標を設定すると、パフォーマンスの思考心理が優位に立ち、無駄にその思考心理が守られる。社員が自ら時計を支配する仕組みが社内に確立されていなければ、社員は「自分が出す成果は自分で管理できるものではない」と感じ、倫理に反する手段を使ってでも目標を達成しようとするようになる。それにより、悪事に手を染める人や非道な行動をとる人が生まれるというわけだ。

企業の不祥事がなくならない根本理由

具体的な数値目標とトップダウン型の序列制度が組み合わされば、社員は決断の責任を担うことから解放される。VWのエンジニアがディーゼル排気の改ざんに加担する、退役軍人省管轄の責任者たちが実体のない名簿を作成する、医療ベンチャーのセラノスが血液検査の結果を偽造する、といった事件が起こるのはそのためだ。

トップダウン型の序列制度では、非道な人や倫理に反する人、あるいは単に間違っている人がひとりいるだけで、会社全体が道を踏み外しかねない。そういう組織では、自らの決定の責任から誰もが解放されるからだ。

「暴走する目標」の論文筆者らは、階級分けされた組織では、倫理に反する行動をとる傾向は目標と密接に結びついていると主張する。数字をごまかすこともあれば、プロセスをごまかして目標の数字に到達させることもあるという。

「組織内で無謀な目標を設定すると、倫理に反する行動につながる組織環境が育まれる」と彼らは考えているのだ。

企業の不正は数多い。それらの違反を引き起こした原因が、数名の堕落した個人にあるとは思えない。不正の兆候を示す、もっと根本的な原因があるはずなのだ。

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