刑事責任あいまいに?問題含み「略式起訴」の実態

公開裁判でないため冤罪が発生するリスクも

法律上、略式命令の請求を受けた簡易裁判所は、略式命令を出すのが相当ではないと判断すれば、略式命令を出さずに通常の刑事裁判に移行することが認められている(刑事訴訟法463条)。

過去にも、電通の違法残業(労働基準法違反)の事件で検察官は略式命令の請求をしたところ、東京簡易裁判所が相当ではないと判断をして、通常の裁判手続きで審理が行われ、話題になったことがある。

しかしながら、多くのケースでは、公開法廷できちんと審理を受けて裁かれてしかるべきケースにおいても、事件をあいまい、うやむやにする「落としどころ」的な処理として略式手続が用いられている面は否定できないように思われる。

略式手続は捜査が簡略なものになりがち

2つ目の冤罪の危険がある点について、略式手続は被疑者が犯罪事実を認めたうえで、略式手続で処罰を受けることを同意したことを条件に、書面の審査だけで罰金刑を言い渡せる手続きである。

被疑者が罪を認める「自白」をしていることを前提に簡易に進められる手続きであることから、いきおい捜査も簡略なものになりがちで、十分な裏付け捜査や客観的な証拠の収集などが不十分なものになりやすい。そのため、本当はやっていない(無実である)のに、言い分がきちんと聴いてもらえず処理されてしまいがちである。

被疑者にとっても、有罪となっても罰金刑という比較的軽微な刑罰であり、逮捕勾留されている場合には、略式手続に同意すれば釈放される。「自分は無実だ」と思っても、犯行を否認した場合の不利益(審理の長期化、公開審理による弊害などによる精神的、経済的な負担)を考え、罰金刑により事件を終了させることを選択してしまうケースがしばしばある。

筆者の弁護人としての経験上も、被告人が、検察官から略式手続に同意するかどうかの決断を迫られ、不本意ながらも、犯罪事実を認める内容の供述調書に署名押印し、略式手続に同意をしてしまっているケースもわりとよく見かける。

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