東大教授が教える「頭のいい人」の"多段思考力" 物事を単純に捉えて「わかった気」の危うさ

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スマホでニュースのヘッドラインを読んでいるのも、テレビのテロップを見るのも単段思考です。内容も確かめず、見出しや結論だけ見て事実だと受け取るのは、判断を人任せにしているのと同じ。恐ろしいことに、「単段思考」に慣れた人は、その単純な考え方が当たり前になっていきます。複雑なことを考え続けずに物事を単純化してしまうと、大事なポイントが分からないどころか、誤解が生じる場合もあります。

たとえば、あなたの部下のAさんがいつもミスばかりしているとします。単純思考の人は、「Aさんの性格が大雑把だから、この仕事には向かないんだ。異動させたほうがいいだろう」と考えるかもしれません。しかし、それはあまりにも軽率な考えというものです。自分の指示の出し方が悪いのかもしれないし、Aさんは他の先輩からも仕事を頼まれていてオーバーワークになっているのかもしれません。

ミスが多いとひと口に言っても、原因はいろいろと考えられます。単段思考で判断することで、Aさんの人生を左右することにもなりかねません。物事が重大なときほど、慎重に「2.多段思考」で考えて判断する必要があるのです。

単段思考をやめるにはプログラミング

『東大教授の考え続ける力がつく 思考習慣』(あさ出版)書影をクリックするとアマゾンのサイトへジャンプします

単段思考をやめる方法の1つとして、プログラミングがおすすめです。プログラミングは、コードを1つでも間違えたらバグが出てしまいます。バグは、コンピュータプログラムの欠陥です。バグが発生するとプログラミングが止まり、先へ進めなくなります。そのため、どこが間違っているのか必ず確認して、バグを取り除くバグ取りをしなければいけません。

つまり、プログラミングをすると、バグが発生するたびに問題点へ立ち返り、「なぜ間違えているのか」「どこを間違えているのか」を考えることができます。バグ取りを繰り返すと、大事なポイントを見極めるいい練習になるのです。自分が正しいと思うことをやっているつもりでも、人間は必ずと言っていいほど、どこか間違っているものです。

「1.自己駆動力」「2.多段思考力」「3.疑い力」「4.大局力」「5.場合分け力」「6.ジャンプ力」「7.微分思考力」の思考体力を駆使して、考え続ける思考習慣を身につけることができれば、自ずとやるべきことが見えてくるはず。そして、それはあなたにとって最強の武器になるのです。

西成 活裕 東京大学先端科学技術研究センター教授

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にしなり かつひろ / Katsuhiro Nishinari

専門は数理物理学、渋滞学。1967年、東京都生まれ。東京大学工学部卒業、同大大学院工学研究科航空宇宙工学専攻博士課程修了。その後、ドイツのケルン大学理論物理学研究所などを経て現在に至る。予備校講師のアルバイトをしていた経験から「わかりやすく教えること」を得意とし、中高生から主婦まで幅広い層に数学や物理を教えており、小学生に微積分の概念を理解してもらったこともある。著書『渋滞学』(新潮社)で、講談社科学出版賞などを受賞。ほかに『とんでもなく役に立つ数学』『とんでもなくおもしろい仕事に役立つ数学』(KADOKAWA)、『東大人気教授が教える 思考体力を鍛える』(あさ出版)など、著書多数。

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