東大教授が教える「頭のいい人」の"多段思考力" 物事を単純に捉えて「わかった気」の危うさ

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もちろん、仕事の場面になると思考の段数が大幅にアップする人もいるでしょう。それでも、「何でも早いに越したことはない!」とばかりに、本も読まず、よく調べもせず、人の意見を聞くこともせずに、早く答えを出そうとする人が少なくないように感じています。まだまだ経験値が少ない人が考え続けることをサボってしまうと、10年後、20年後に、思考習慣がある人たちとの差が広がっていきます。

たとえば、明日締め切りの企画書を作らなければいけない場合。インターネットで検索して付け焼き刃で考えてみたり、他社で売れている商品を参考にして、1〜2段考えた企画をそれっぽい内容に仕上げて早めに提出する。

それとも、「いやいや、ちょっと待てよ」と思い直して、「もっと面白い企画を考えてみよう」ともう1段、あともう1段とギリギリまで考え続ける。

大抵の人は早く終わらせることを優先しがちですが、仕事ができる人はギリギリまで粘り強く考え続けます。もっと言えば、普段からアイデアをメモしていたり、企画のストックを作っておいて、何度も熟考する思考習慣が身についている人のほうが、よりよい仕事を生み出す可能性が高まります。

まずは最低3段考える習慣を

そこで私は、どんなに忙しい人でも、まずは最低3段考える習慣をつけたほうがいいという話をよくします。何でも3段まで考えられるようになれば、その後も3段ずつ分けて考えるようにしてみてください。そうすると、3段が1段くらいに感じられるようになり、思考の段数が増えていきます。

最初は間違いや失敗を恐れず、とにかく3段は考えて実行してみることが大事です。失敗を恐れていると、なかなか経験値が上がっていきません。もし、どうしても自分で考えて実行できないのなら、最初は「多段思考力」の高い人の真似をして疑似体験してみるのも1つの方法です。

ビジネスの現場では、それをOJT(On the Job Training/実地訓練)として導入している企業も多くあります。以前、銀行のOJTの話を聞いたとき、担当者は「ベテランと新人の違いは、何を省略すればいいか知っているかどうかなんですよ」と言っていました。

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