野球部監督の叱責で16歳少年が自殺、遺族の訴え なぜ彼は死を選び、両親は9年後の今も闘うか

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操山高校のPTA会長だった男性は、自殺から8カ月近く経った2013年2月の新聞報道で事実の詳細を知り、初めて遺族と対面。「事件の重大性とPTAとして遺族に寄り添う必要性を感じた」という元PTA会長は同年3月、遺族とともに県教委と面会した。

その際に生徒指導推進参事(県警からの出向者)が言った「調査委員会を立ち上げても、(自殺と顧問の指導との)因果関係はわからんよ」という言葉を脅しのように感じたそうだ。

一周忌直後の2013年8月、顧問は当時の校長と前出の元PTA会長に促され、一度だけ遺族と対面した。だが、顧問は話の途中で「あなたの考えは間違ってる、あなたの表現は違うとすべて言われたら、すべて違うんです。私自身も多分ここにいないほうがいいんです、多分。もう、もう、はい、わかりました!」と声を荒らげてキレてしまい、遺族への謝罪の場とはならなかった。

その後顧問は操山高校に置かれたまま、通信制教員にシフト。軟式野球部の監督に就任した。

A君の三回忌法要が営まれた2014年7月、顧問率いる軟式野球部が全国高校定時制通信制軟式野球大会東中国予選を突破し、本大会出場を決めたニュースが地元紙を飾った。顧問は何の処分も受けず、教員を続けている。

第三者委員会設置を拒み続けた、県教育委員会

一方の県教委は、遺族が求める第三者委員会設置を拒み続け、遺族との調整もついていないなか、「自殺予防と発生時対応マニュアル」を操山高校での自殺問題を受け作成したと2013年10月に地元紙で公表した。

A君の父親は「そうやって論点をずらす姿勢は、ずっと変わらない」と不信感を隠さない。

「今の教育長も、子どもの気持ちに気づける環境整備をする、子どもの悩みを聞くと言う。そうではなくて、そういう気持ちにした先生が悪かったと原因を探らなければ、学校や部活動での暴言やパワハラはなくならないはずだ」

運動部活動の顧問による暴言やパワハラを「暴力」ととらえない風潮は、今も日本の社会では根深い。

2018年に自死した岩手の県立高校バレーボール部員も、今年1月に亡くなった沖縄の県立高校の運動部員も、顧問の暴言や無視など理不尽な扱いがその要因だ。両方ともA君のように叩く、蹴るといった有形暴力は受けていない。どの子もみんな、パワハラという教員の立場を利用した「いじめ」を受けて亡くなったと解釈できる。

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