大手メディアが「五輪強行開催」にだんまりの背景 大手各社が組み込まれた「メディア委員会」

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大会組織委員会戦略広報課は筆者の取材に対し、「メディア委員会委員には謝礼も交通費も払われていない」と述べた。

そのうえで、メディア委員会の目的については、「組織委員会で初めて設置した専門委員会であり、大会を成功に導くための諸課題についてメディアの視点からアドバイスや検討をするための委員会です」と説明。具体的な活動内容については、「アクション&レガシープラン策定時におけるご助言、東京2020年オリンピック・パラリンピックに向けた小中学生からのポスター募集企画における最終選考があります」とのことだった。

アクション&レガシープランとは、東京オリパラ大会を契機とするレガシー(遺産)とその実現に向けた具体的行動を盛り込んだ計画のことだ。

大会組織委幹部とメディアの代表者が東京オリパラ大会について意見交換することを筆者は否定しない。しかし、各メディアの経営幹部らが五輪大会運営側の委員会委員として名をずらりと連ねていれば、現場の記者たちやデスクたちもなかなか五輪の批判記事を書くことが難しくなるだろう。空気を読む同調圧力が強い日本社会ではなおさらのことだ。これで公正、公平で中立的な五輪報道ができるのか。

世界200カ国から9万人超が日本にやってくる

世界を見渡せば、インドで最初に発見され、感染力が強いデルタ株が各地で主流となり、感染が再拡大している。インドでは、デルタ株がさらに変異し、感染力が増した「デルタプラス」が確認された。ペルーで最初に見つかったラムダ株も南米を中心に猛威をふるっている。

人類の歴史を振り返れば、ウイルスは変異を繰り返すうちに強力化してきた。パンデミックの最中、世界200カ国以上から選手や大会関係者ら9万人超が参加する予定だ。新型コロナウイルスを見くびり、五輪が決して変異株の培養皿や集団発生の温床になるようなことがあってはならない。

五輪は巨額のオリンピックマネーが動く、一大スポーツ興行と化している。しかし、このコロナ禍、メディアの使命はあくまでカネよりも人命や人々の安全を守ることが最優先だろう。特に、日本メディアは戦前・戦中、権力を持つ側が一方的に流す「大本営発表」に踊らされた痛い教訓を踏まえ、独立した報道機関としての社会的な役割を果たすことが改めて求められている。

高橋 浩祐 米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

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たかはし こうすけ / Kosuke Takahashi

米外交・安全保障専門オンライン誌『ディプロマット』東京特派員。英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』前特派員。1993年3月慶応義塾大学経済学部卒、2003年12月米国コロンビア大学大学院でジャーナリズム、国際関係公共政策の修士号取得。ハフィントンポスト日本版編集長や日経CNBCコメンテーターなどを歴任。朝日新聞社、ブルームバーグ・ニューズ、 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、ロイター通信で記者や編集者を務めた経験を持つ。

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