WeWork「利用料半額キャンペーン」に透ける思惑 コロナで稼働率悪化、株式上場にらみ躍起に

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大幅な値引きの背景にはコロナ以外の事情もある。別のオフィス仲介会社の担当者は「上場計画が絡んでいるのでは」と推測する。

ウィーワークは2021年下期をメドに、特別買収目的会社(SPAC)を通じてアメリカの株式市場に上場する計画を立てている。前出の投資家向け説明資料もSPAC経由での上場を前提に公表されたものだ。

資料では、2021年以降の業績がV字回復すると見込んでいる。稼働率も2020年末を底に2021年末には70%に、2022年以降は安定的に8割を超えるシナリオを描く。前出の都内仲介会社は「投資家の歓心を買うために、値引きをしてでも入居を進めて数字上の稼働率を高めたいのではないか」と話す。

重要度高い日本市場をテコ入れ

6月時点で世界38カ国に展開するウィーワークだが、日本の存在感は大きい。2020年12月期決算では売上高32億ドルのうち、日本だけで2.4億ドルを稼いだ。

投資家向け説明資料では地域別の売上高が開示されているが、「アメリカおよびカナダ」「EMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)」「太平洋地域」などの分類にまじって日本だけが単独で表記されている。上場を意識するうえで、重要度の高い日本市場にテコ入れを行った可能性がある。

国内のウィーワークについては、従来から「価格設定が強気で、賃料負担力の高いテナントしか入居できない」との指摘があった。一連の値引きは、他社のシェアオフィスと顧客争奪戦が激化することを意味する。すでにウィーワークの値引きを受け、他社のシェアオフィスも利用料の値下げを行う動きが出てきているようだ。シェアオフィス市場の競争は混沌としてきた。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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