医療費100万円請求?本当に怖い「130万円の壁」 健康保険組合から「高額請求」のナゾ

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ちょうどその年に運悪く、入院して手術を受けるなどして、病院の窓口で3割負担した金額の合計が年間で42万円ほどだった場合は、健康保険組合が7割負担分として年間100万円を負担していたことになるため、本来負担しなくていい健康保険組合から100万円が請求されることになるのです。まさにこのケースが冒頭のMさんになります。

3:100万円はどこにも請求できない?

健康保険組合から100万円を請求され、泣く泣く支払うことになったMさんですが、この100万円をどこかに請求できるかというと原則できません

まず、Mさんの配偶者は今年の1月に遡って扶養から削除されたので、今度はその受け皿となるお住いの市区町村の国民健康保険に加入する必要が出てきます。

ただ、問題は国民健康保険の加入日です。日本は国民皆保険制度であり、国民全員が何かしらの年金、医療保険制度に1日の空白も空けずに加入する必要があります。そのため、市区町村で手続きをすれば、国民健康保険の資格取得日も扶養から削除された今年1月1日まで遡って、加入手続きされることになります。

もちろん、遡って加入すればその分の保険料を支払う必要があるため、今度は今年1月1日からの国民健康保険料が請求されることになるわけです。

次に問題の100万円の医療費分ですが、国民健康保険は遡って保険料を取られますが、過去の7割負担分については、やむをえない事由がない限り遡って負担してくれないのが原則です。

お住いの市区町村の判断にもよりますが、国民健康保険料が新たに発生し、過去医療費分は戻ってこないケースが通常です。まさかと驚いてしまいそうですが、これが現実です。

4:国民年金も第3号から第1号に

Mさんの悲劇はまだ終わりません。医療保険については、前述のとおりになりますが、実は国民年金についても国民年金第3号でなく、国民年金第1号で加入すべきところ、間違って加入していたことになるのです。

Mさんの配偶者は、Mさんの健康保険の扶養とセットで国民年金第3号被保険者になっていました。健康保険の扶養と国民年金第3号の要件は同じになるので、セットで加入していたわけです。したがって、今度は国民年金についても今年の1月に遡って手続きする必要が出てきます

国民年金第3号については、保険料負担が一切なく、将来年金をもらえる制度ですが、国民年金第1号となれば毎月保険料が発生してきます。ちなに、国民年金第1号の保険料は、1万6610円(令和3年度)です。したがって、例えば、今年度1年分遡ることになれば、新たに19万9320円負担が増えることになってしまうのです。

このように、制度を知らずに当たり前に恩恵を受けていると、制度の要件から外れた時に、突然あちこちから高額の請求がくることがあります。配偶者の収入には、くれぐれもご注意ください。

武澤 健太郎 大槻経営労務管理事務所社員役員、特定社会保険労務士

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たけざわ けんたろう

社会保険労務士法人 大槻経営労務管理事務所 HRコンサルティング事業部担当役員。2011年9月に経営労務監査プロジェクトのプロジェクトリーダーとして、数多くの労務監査を手掛ける。2012年5月に特定社会保険労務士を付記するとともに、多数のクライアントより個別労使紛争を含む労務相談を受ける。そして、2013年9月には、海外進出プロジェクト担当リーダーに就任し、アジアを中心とした海外進出に必要な労務管理、労働社会保険のアドバイスを積極的に行っている。

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