物件内見中わいせつ事件に「賃貸業界」が戦慄の訳 不動産業界は30年前から変わっていないのか

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とはいえ、入室を控えるというのは、現場としてはかなりの難問だ。部屋の奥や、トイレ、バスルームなどにいる入居希望者からの質問に、従業員は玄関ドアの外から答えなければならなくなる。入居希望者にハンディカメラを持って部屋に入ってもらうなどしなければ、「この設備、何ですか」「見えないのでわかりません」といった状態になるため、徹底はなかなか難しいだろう。

なお、古い時代を知る人であれば、「昔の内見はそんなもんだった」と、言うかもしれない。1990年代前半頃までは、入居希望者が鍵を渡され、1人で物件を見に行くことは普通にあった。

しかし、現在、それは非常識なこととなっている。物件や設備の汚損、毀損が発生した場合など、責任問題がきわめてややこしくなるためだ。

つまり、仲介会社等の従業員ではなく、どちらかというと入居希望者側の行動こそが警戒されているのが、現在の「密着付き添い型」内見スタイルの重要な一面といえるだろう。

業界はバブルの昔と変わっていないのか?

今回の事件をうけて、多くの業界関係者がショックを受けている。それは、不動産仲介会社の従業員が、警察の捜査員に囲まれ、店から引き出されていくという情景が、まるで30年も前の悪しき世界のよみがえりのように映るからだ。

当時といえば、世の中は「バブル」末期の頃にあった。不動産業界の一部はかなり荒れた状態になっていて、賃貸仲介の窓口でも、店選びをうっかり間違えれば、客は大変なリスクに見舞われることが多々あった。

客だけではない。彼らと仕事で付き合う側も大変だったと言っておく。

賃貸情報誌の女性営業スタッフが悪質ないたずらをされた例もあれば、不正な行為を諫めた取引先の人間が、「殺す」と脅される例もあった。そんな店の裏口に回れば、覚せい剤の注射に使用した注射針が無数に散らばっているといったことも、いまでは考えられないが、現実に見られたことだ。そうしたなか、従業員による強制わいせつどころか、客が殺害される事件も発生したことがあった。

昔を知る人からは、「あなた方は変わっていなかったのか」と、呆れ顔で言われてしまうことを業界の人々はいまとても心配しているというわけだ。

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