天才オードリー・タン母語る「子を自立させる術」 高く評価される台湾IT相を育てた教育の真髄
他者主導型学習では、親や教師などの大人が子どもの人生に起きうる危機や困難をすべて予想し、それに向けて準備できるよう子どもを手助けします。子どもが大人の望んだ結果を出せそうにない時は、先回りして行動を制限します。例えば、「宿題が終わらなかったら、寝てはいけません」「ご飯を食べなかったら、遊んではいけません」という具合に。
ここでは、大人が自分または社会の価値観に従って、宿題は睡眠よりも、食事は遊びよりも重要だと判断しています。子どもを大人が望むとおりに行動させようとするのは、それが子どもにとっていいことだと信じているから。でも、子どもが楽なほうへと流れることも心配です。そのため、大人はご褒美や罰則といった強い圧力の必要性を感じます。
一方、自主学習では、まだ起こっていない遠い未来の危機や困難を予想することは滅多にありません。親や教師は、今まさに子どもが直面している大小さまざまな困難にのみ注目し、今の子どもにできる方法で対処するよう励まし、自然に生まれた結果をもとに指導します。
例えば、「宿題が終わらなければ、自分で先生にそう伝えないといけないよ」「今ご飯を食べなければ、次の食事まで何も食べられないよ」と伝えます。宿題と睡眠、食事と遊びのどちらがより重要か、子どもの代わりに大人が判断することはありません。
大人が用意するのは、子どもが落ち着いて宿題ができる時間と、安全に眠り、ご飯を食べ、遊ぶための場所だけです。
子どもを信じ、大人の役割を果たす
子どもは必ず楽なほうへ流されるとも、必ず一生懸命に努力するとも決めつけず、子どもは今いる場所で、今できることをするものだ、と考えるのが自主学習です。親や教師自身も、自然でまっさらな心の状態で子どもに接しなければいけません。子どもを放っておくのではなく、ただ子どもを信じ、大人は大人の役割を果たしながら、子どものことは子どもがやるべきだと考えるのです。
子どもは一つ一つ選択し、経験してこそ、自ら進んで努力しようと思う目標を見つけられます。こうして人と協力する能力や、事務作業をこなす能力を身につけ、さらに心から誰かを大切に思い、尊敬できるようになるはずです。
大人がするべきこと、子どもがするべきことの内容は、大人と子どもで話し合って、両方が納得できる答えを見つければいいでしょう。
あなたは「子どもが時間を無駄にしたらどうするんです?」と尋ねました。
私は「あなたが時間を無駄にしたらどうするんです?」と聞き返しました。するとあなたの表情がさっと曇ったので、きっと不愉快な思いをさせたのだと思います。でもこれは本当のことです。子どもも大人も1日は24時間しかないのに、子どもだけが時間を無駄にしているなんて言えないでしょう?
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