コロナ禍も快走!マックが「店外」で圧倒する真因 最高益の裏に持ち帰り・宅配の"綿密戦略"あり

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数々の取り組みが好循環を生む中、今年3月、約7年間にわたり日本マクドナルドHDを率いてきたサラ・カサノバ社長が退任。後任の社長には元取締役の日色保氏が就き、カサノバ氏は会長職に就任した。

日色社長はジョンソン・エンド・ジョンソンの日本法人社長を経て、2018年に日本マクドナルドHDへ入社。2019年3月には事業会社である日本マクドナルド社の社長に就任していた。

社長交代のオンライン記者会見に臨むサラ・カサノバ氏(左)と新社長に就任した日色保氏(右)(写真:日本マクドナルドHD)

マクドナルド入社当初から「組織や人材の育成経験が豊富」(カサノバ氏)との評価を受けていた日色氏。優秀な人材の採用と育成に注力する方針を掲げる。

同社では2020年度は店舗数こそ微増程度だったが、採用を重点的に強化し、働くクルーの数は1年間で約15万人から約17万人へと急増。目下、宅配業務と店舗業務両方をこなせるクルーの育成にも注力しており、今後さらに人材への投資を強める考えだ。

改装など店舗投資も積極化させる。活況ゆえに、店舗では顧客の待ち時間が長くなるケースも多発。そのためドライブスルーのレーン増設に加え、ハンバーガーの製造能力が2倍になるような新型キッチンの導入も進める。

ファストフードの競争は熾烈化

3月までは店外でのまとめ買い需要が好決算に結び付いた日本マクドナルドだが、直近の既存店の客単価を見ると、前年の反動で4月は9.7%減、5月は13.7%減と前年同月割れが続く。客数増により既存店売上高自体は伸びを確保しているものの、店舗改装や購買利便性を上げる施策のさらなる投入により、客数拡大をどこまで維持できるかが、今後の成長の鍵を握るだろう。

足元では、多くのプレーヤーがコロナ禍でも堅調なファストフード業態に参入している。

松屋フーズホールディングスはライスバーガー専門店「米(my)バーガー/こめ松」を4月よりデリバリー限定で展開。ロイヤルホールディングスも5月にバターチキン専門店「Lucky Rocky Chicken」を出店し、鳥貴族ホールディングスも8月に新業態「トリキバーガー」を都内でオープンする予定だ。

大手を中心に、モバイルオーダーや宅配などマクドナルドが強みをもつ領域を強化する動きが広まり、胃袋を取り合う争いは苛烈化している。マクドナルドも絶えずサービスをブラッシュアップできなければ、コロナ禍で磨いた「勝利の方程式」が通用し続ける保証はない。

中尾 謙介 東洋経済 記者

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なかお・けんすけ

1998年大阪府生まれ。現在は「会社四季報」編集部に在籍しつつ水産業界を担当。辛い四季報校了を終えた後に食べる「すし」が世界で1番美味しい。好きなネタはウニとカワハギ。

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