「テスラ」が赤字から脱出できた超意外なカラクリ 2021年1月末の時価総額はなんと82兆円

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なぜテスラは創業時から続く赤字を脱出できたのか?(写真:NurPhoto/Getty)
2020年通期決算をもって、創業時から続く赤字をようやく脱出できたテスラ。だが、そこにはあまりにも意外な「カラクリ」があった。テスラ誕生の歴史からトヨタとの蜜月や、赤字を脱出できた理由などを、ジャーナリストの安井孝之氏による新書『2035年「ガソリン車」消滅』より一部抜粋・再構成してお届けします。

世界のEV市場を今、牽引しているのは米国のEV専業メーカー、テスラである。2020年の全世界でのEV販売台数は前年比36%増の49万9647台だった。2位の独フォルクスワーゲン(VW)は23万1600台で、テスラは2倍以上の差をつけ、ダントツのトップだった。

上位10社にはテスラのほかドイツのVW、BMW、ダイムラー、アウディ、フランスのルノー、スウェーデンのボルボ、中国の比亜迪(BYD)、上汽通用五菱汽車(SGMW)、上海汽車集団(SAIC)が入った(「Statista」調べ)。環境規制の強化でEVシフトが進む欧州勢が順位を上げた。日産自動車が順位を下げ、日本勢は10位以内から姿を消した。

2020年末には株価8倍の82兆円

テスラ株はコロナ禍の2020年3月ごろから急騰し、2020年末に株価は8倍となった。全世界的なEV化の波が大きくなるとともに、ESG(環境・社会・企業統治)投資への関心が高まり、世界各国の金融緩和マネーがテスラに集まった。

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その結果、テスラの2021年1月末の時価総額は82兆円に上り、世界の自動車大手社・グループ(トヨタ、VW、GM、ルノー・日産・三菱自動車、ダイムラー、ホンダなど)の時価総額の合計77兆円を上回ったという(「日経ヴェリタス」2021年1月31日号)。

年間販売台数が50万台足らずの中堅自動車メーカーにすぎないテスラが、時価総額では大手10社が束になってかかってもかなわないような存在になった。その歴史を振り返ってみる。

テスラ(創業時はテスラ・モーターズ)の誕生は2003年。マーティン・エバーハード氏とマーク・ターペニング氏の2人の技術者が創業した。

現在CEOのイーロン・マスク氏が経営に参画するのは2004年から。そのためマスク氏は共同創設者という位置づけだ。

テスラがEV販売に乗り出したのは2008年。まだリチウムイオン電池を搭載したEVは世に出ていなかった。最初のEV「ロードスター」(2人乗り)はノートパソコン用のリチウムイオン電池を6831個も搭載し、航続距離を伸ばそうとした。そのため電池の重さが450kgとなり、クルマの軽量化に苦労した。

ただ新規参入者だけにユニークな考え方がテスラにはあった。既存メーカーにはクルマに搭載する電池は車載用として特別に用意した電池が必要だと考えていた。自動車向けの部品には高い信頼性や安全性が求められるからだ。ところがテスラは違った。

多く普及しているPC用電池を転用するというアイデアを生み出した。テスラの型破りのアイデアに自動車業界は驚いた。

次ページ【写真】テスラ初のEV「ロードスター」
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