イスラエル、なぜいま「12年ぶりの政権交代」か 汚職問題などでネタニヤフ首相がついに退陣へ
パレスチナ国家に反対する理由として、ハマスが実効支配してイスラエルにロケット弾を撃ち込むガザ地区のような「テロリスト国家」にヨルダン川西岸がなる可能性が高いと指摘。パレスチナが国境管理を担えば、数百万人に及ぶパレスチナ難民の帰還を許し、ユダヤ人が100年以上にわたって築いてきた人口的に優位な状況が崩れてしまうとの警戒感をあらわにした。
ヨルダン川西岸でのユダヤ人入植地が固定化して将来的なパレスチナ国家の領土が分断され、2国家解決案が絶望的になる中、ユダヤ人とパレスチナ人が共存する1国家解決案もパレスチナ問題の打開策として近年、注目を集めている。
だが、ベネット氏は、この案に対しても否定的であり、アメリカやフランスなどから数百万人のユダヤ人移民を迎え入れることで、イスラエルのユダヤ人人口の優位を保っていく考えを示している。このように、パレスチナ問題に関しては、ネタニヤフ氏と同等か、それ以上に強硬な立場を取っており、連立に左派政党や中道政党が加わるとはいえ、和平の進展は絶望的な状況だろう。
ベネット氏は、アメリカのバイデン政権がイラン核合意への復帰を模索している問題では、イラン核合意の大幅な見直しを要求。核合意の期限が到来すると核開発の制限が解除される「サンセット条項」を取り消す必要があると訴えているほか、中東地域の過激派や民兵勢力への支援などイランによる「テロの輸出」も停止しなければならないと強調している。
ネタニヤフ氏の政治生命は終焉
政治手腕に長け、自身の政治的な得点のためならパレスチナ問題での軍事力行使もいとわなかったネタニヤフ首相。合意した各政党の議員に対して切り崩し工作をぎりぎりまで続けるとみられている。
連立政権発足には、120議席の議会で61議席を確保する必要があるが、合意に加わった8党の議席は62議席だ。イスラエルの政治評論家は「まだネタニヤフ首相の退陣が決まったわけではない」と、さらなる波乱もあり得るとの見方を示している。
ただ、ネタニヤフ首相の政治生命はついに尽きた感がある。首相の座から降りれば、汚職事件で争われている裁判では不利な流れが強まりそうだ。自身に対する恩赦や判事の任命などを画策するとの観測もあったが、この道も断たれる。
アメリカでトランプ前大統領をめぐって社会の分断が深まったように、イスラエルでもネタニヤフ氏を支持する勢力と、支持しない勢力の間での亀裂の修復は容易でない。12年も連続して首相を務めたネタニヤフ氏しか首相を知らない若い世代も増えており、同氏が存在しないイスラエルの政治が安定に向かうには、時間がかかりそうだ。
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