社内で反発も!エプソン「紙半減」に本気出す真意 プリンターメーカーなのに超大胆な取り組み

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小川社長は「プリンターの本来の目的は、紙に印刷することではなく、紙への印刷によって、業務効率をあげたり、仕事を円滑に進めたり、オフィスの環境をよくすること」と前置きしながら、「今の時代、効率性を高める手段は、紙に印刷することだけが答えではない。効率的な仕事や教育ができるというのであれば、紙にこだわる必要はない」と語る。

確かに、紙による一覧性や視認性の高さ、人への伝えやすさは多くの人に認識されているメリットだ。また、紙のほうが作業しやすく、記憶に残りやすいといった、これまでの慣習による効果もあるだろう。実際、ウェブ媒体の編集部でも、紙に印刷して最終校正をしている例もある。

しかし、デジタル化の進展やリモートワークの広がりなどによって、ペーパーレス化の進展は、大きな潮流となっている。

紙の需要を維持したいという気持ちはない

「大きな流れでいえば、デジタル化によってペーパーレスが進み、紙への印刷は減少することになる」と小川社長も予測する。そして、ペーパーレス化の潮流を前提に「紙のよさばかりを前面に打ち出し、紙の需要をなんとか維持したいという気持ちは、今のエプソンにはない、紙を減らす中で、エプソンは何ができるかを考えていくことにした」と語る。

「紙を減らす中で何ができるかを考えていく」と話す小川社長(筆者撮影)

紙が減少するという流れの中で、プリンターメーカーであっても、いつまでも紙だけに執着したビジネスを続けるつもりはないということであり、言い換えれば、紙に固執したビジネスだけでは先細りになるという危機感でもある。

その危機感を社内から浸透させていく取り組みが「エプソン 紙を減らす活動」ともいえる。

この活動では、紙削減活動を通じて、電子化などによる業務効率化を図り、同時に社員の環境意識の向上も目的にしている。

ネットワークにつながるプリンターの印刷実績データを把握し、これを社内で共有。事業部や本部ごとに印刷データをベースに分析を行い、それぞれ部門での達成度を示す。また、ムダの削減や、電子化およびワークフロー化などの計画を立案し、この中で成果があがった活動は、ほかの部門に横展開するという。

同社によると、印刷ボリュームの多い業務を見直して電子化したり、会議で配布する資料はすべて精査して削減できるものは即実践したりするという。また、保管文書についても、今後はPDF化を進めることが決められているという。

紙で残すことが許可されているのは、法律などで指定されている文書。それ以外の社内文書では、電子化をベースとした承認フローの採用でペーパーレス化し、社外との契約書も電子署名化を進めるという。紙半減は、単なる掛け声だけではなく、全社をあげた業務改革につなげる本気ぶりだ。

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