組織が見落としがちな「管理職にこそ必要なケア」 立場が上になると自分自身を見失いやすくなる

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社会生活を積み重ねていくと、感情に振り回されることを避けるために、自分に向き合う作業は意外と難しく、さらに、見たくない部分や認めたくない部分があるとなおさら困難になります。そして、目をそらし続けると、ますますわかりづらくなります。

自分がどう感じているのかということを自覚することは実はとても大切なことです。特にマイナスの気持ちを自覚できないと、早めに対処ができないばかりか、手遅れになってから初めて自覚するということが起こります。わけもなく、イライラすることも増えるでしょう。

現に、「自分は大丈夫と思っていたのに、気づいたときには立ち直れないほどの状況に陥っていた」という相談者を数多く見てきました。特に管理者は、「まだいける」と頑張りすぎる傾向もあります。心の健康を保つには、自分の気持ちに敏感になり、早めにリカバリーを試みることが大切です。そのためにも、自分のことを把握する必要があるのです。

目的地に行こうとするときに、現在地がわからないまま、そこへ行く手段を見つけることは決してできません。こうありたいと理想を描くことはある意味簡単です。しかし、現在地点を模索することは至難の業なのです。特に立場が上になればなるほど、周囲から客観的な意見をもらえなくなり、自分自身を見失いやすくなるのです。

自分を「肯定的に」見られますか?

また、自分を認めることも大切です。よい部分に目を向けるということです。実際に、自分自身の内面を自己紹介してください、というワークを研修の中で実施すると、「せっかちなところがあり、それゆえに失敗することも」とか「他人から言われたことをいつまでも引きずってしまうことがある」など、どちらかというとマイナスのことを話す方が多いのです。

謙虚さや遠慮が美徳とされてきた中で、自然と身に付いてしまったものなのかとも思いますが、誇張した自慢は別として、自分を肯定的に見るということはとても重要です。自分を卑下する傾向にある人は、他人に対してもそういった目線を向けてしまいがちです。自分のよい面を見出せないと、他人のよい面も見出せないのです。

要するに、自分をプラス評価できない人は、相手もプラス評価できないので、職場での評価にも影響します。

そうした意味で、管理者ほど「自分の等身大を映し出してくれる」セルフケア教育の役割は重要になります。

セルフケアは一般職に、管理者には部下へのマネジメント要素の強いラインケアをと考えがちかと思いますが、管理者にこそセルフケアの教育を行うことが、ラインケアの効果を最大限に生かせると実感しています。

5月病という言葉をご存じの方も多いと思いますが、5月中旬ごろから6月末にかけては、不調を訴える方が増える時期でもあります。メンタル不調者への対応、ハラスメント対策など、秋に向かい社員教育の内容を検討する時期でもあると思いますので、参考にしていただければと思います。

自己理解があってこそ他者理解は深まります。まずは、リーダーである管理者が、自己理解を深め、コミュニケーションのための土台作りを目指しましょう。

大野 萌子 日本メンタルアップ支援機構 代表理事

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おおの もえこ / Moeko Ohno

法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。現在は防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで年間120件以上の講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書に『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)がある。

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