あえて「衝突映像」を公開するスバルの企業姿勢 JNCAP大賞獲得を支える「安全」へのこだわり

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警察庁によると、2020年に実施した全国シートベルト着用状況調査で、高速道路では運転席の着用率が99.7%、助手席が98.5%であるのに対して、後席は75.8%にとどまる。また、一般道路では運転席で99.0%、助手席で96.5%に対し、後席はなんと40.3%とかなり低いのが実態だ。

今回の走行速度は、後述するJNCAPの衝突試験で使われる64km/hであり、一般道路でも十分にありうる速度域であるため、後席でシートベルト未着用のまま“もしもの場合”に遭遇すると、公開された映像のような悲惨な状況になりかねない。

シートベルト未着用のダミーは頭部がフロントガラスに接触。ガラスが割れるほどの衝撃を受けた(写真:SUBARU)

この対策として、スバルは警報音付きの後席ベルトリマインダーを初代レヴォーグから装着し、また今回のように機会があるたびに後席シートベルト着用の徹底について啓蒙活動を続けていくという。

そのほか、スバルは2030年の「交通死亡事故ゼロ」を大きな目標に掲げ、アメリカと日本で事故実態の調査を行い、そこからわかった重要なポイントを洗い出し、様々な技術開発を行っている。

例えば、アメリカでは各メーカーのSUVシフトによりクルマが大型化しており、市場全体で過去5年間の平均車重は、1.8トンから2.0トンにまで増加した。そのため、こうした重たいクルマと衝突した際の安全性確保を進めている。

身体を守るエアバッグ、スバルの場合

衝突時の乗員の身体へのダメージは、頭部のほか胸部に受けるケースが多く、特に高齢者の場合、胸部での負荷が高い傾向があるそうだ。

身体ダメージへの対策としては、運転席ではニー(膝部)エアバッグ、助手席ではシートクッションエアバッグを活用し、体重の約6割を占める下半身をしっかり固定することで、上半身と胸部への負荷を軽減させる。

歩行者エアバッグは2016年発売の5代目「インプレッサ」から搭載を進めている(写真:SUBARU)

さらに、歩行者保護の観点では、日本車として初めてボンネットとフロントガラスの間で車外に展開する歩行者エアバッグを装備。Aピラー部分での頭部へのダメージを軽減している。

そして、こうした衝突安全が必要とされる最悪の状況に陥らないように、アイサイトによる予防安全技術を高めているのだ。

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