松坂桃李「ファンの予想を常に裏切る」破格の才能 陰キャからサイコパス…何でも演じる透明な器

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その後、武井主演の『アスコーマーチ~明日香工業高校物語~』(2011年・テレ朝)にも登場。初回、白いスーツで学校の壁を乗り越えてきて、ヒロインにキスするフリをする、いかにもモテ男子キャラなのだが、やはり陰を背負っていて。不幸な家庭環境(父親のDVで母親が精神を病む)で年齢を偽ってホストとして働き、キャバクラ嬢に金を借りたせいで関係を迫られているっつう。明るく屈託なく能天気に太陽光を浴びるイケメン役では決してなかった。

が、朝ドラ『梅ちゃん先生』(2012年)ではヒロインの幼馴染で夫、やっと明るくたくましく闊達な男に。残念ながら梅ちゃん先生で注目されたのは、性格に難のある高橋光臣や、無神経で無責任な満島真之介らサブキャラのほうだった。スピンオフドラマ『梅ちゃん先生~結婚できない男と女スペシャル~』が話題になったとき、「どっちかといえば、桃李はこっち側なんだよなぁ」と思った記憶がある。

クズ・カス系の脇役も何のその

容姿端麗、インテリジェンスも兼ね備え、見た目は明らかに勝ち組の桃李だが、オタクや陰キャのほうが活き活きして見えるという矛盾。『風俗行ったら人生変わったwww』という、どう考えても褒める文言が出てこない映画にも出ていたのだが、桃李だけは明らかに光を放っていた。主人公・満島真之介のチャット仲間のひとりで、タワマンに住む裕福なデイトレーダー役。

迫害された過去があり、自殺を考えたこともあるという、やはり陰のある役だ。「青すぎる空は悲しいほど怖い」なんてポエティックな言葉も吐く。通常運転の桃李。ところが、満島を救うために荒唐無稽な計画を立て、それを模型やミニカーを使って擬音で説明するシーンがあるのだが、激痛なオタク度全開。二度見するほどイメージの違う桃李がいた。陰キャのほうがしっくりくる、と思ったのはそのときからか。

そして、脱ぎっぷりが大胆な役やクズ・カス系の脇役も嬉々として演じていくようになる。『娼年』では女性たちに体を売る高級娼年の役だ。

高級娼年演じた『娼年』(画像:映画『娼年』公式サイトより)

生々しい女性たちの欲望、性の深淵に触れることで存在意義を見出す。『エイプリルフールズ』では手癖も女癖も悪い大ホラ吹き。『彼女がその名を知らない鳥たち』では全女性に白目を剝かせるほど軽薄な男の役だ。しゃべることはほぼ嘘か誰かの受け売り、何もかもが薄っぺらいのに性欲だけは分厚い男を演じた。

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