松坂桃李「ファンの予想を常に裏切る」破格の才能

陰キャからサイコパス…何でも演じる透明な器

この映画、桃李といい竹野内豊といい、二枚目俳優の看板をドブに捨てるくらいのクズっぷりが最高。繊細でフラジャイルな青年の姿はもうない。うしろめたさと世俗にまみれた雄の誕生である。

ここ5~6年の間に桃李がこなしてきた役柄は実に多彩、というか、振り幅がありすぎる。予測不能で、傾向がまとまらない。青い髪でアイスピックを振りかざす鬼畜な殺し屋の『MOZU劇場版』、マインドコントロールで人を操る特殊能力者の『不能犯』、サイコパスでシリアルキラーの手記を読んで感化しかける青年の『ユリゴコロ』、視覚以外の感覚を失った青い目の探偵『視覚探偵 日暮旅人』、ハンディキャップに負けない車椅子の建築士『パーフェクトワールド』、“本を置く場所が欲しかった”というだけで妻子を殺したエリート銀行員「微笑む人」に、童貞であることがコンプレックスどころかアイデンティティの小学校教師「ゆとりですがなにか」……どんだけ自由だよ! あえて「イメージの破壊」を試みている気もする。

世間の思い込みを常にひっくり返す

だからこそ面白い俳優だと思う。「こういう役が似合う」という世間の思い込みを常にひっくり返し、想像を超えてくるから。ベストオブ桃李がどんどん更新されていく印象。ついこの前までは「ゆとりですがなにか」の桃李がドラマでは最高と思っていたが、「今ここにある~」の桃李があっけなく抜き去った感もある。

そうそう、今期のもう1作は、スーパーで働く心優しい漫画青年の役。尊敬する漫画家(麻生久美子)が亡くなったと同時に、おじさん(井浦新)の体に乗り移ってさあ大変という物語。入れ替わりファンタジーというか、亜種のBLというか、とにかく桃李が井浦にベタベタとまとわりつかれるのが『あのときキスしておけば』(テレ朝)だ。漫画愛と人類愛と桃李愛の強い人にはお勧めしておこう。

中年期に入ると、演技力はさておき、無駄に筋肉をつけてしまう俳優が案外多いのだが、桃李はたぶんそっちにはいかないだろう。体型は変わらず、妙な若作りもせずに渋みや重みを加えていく、小林薫や豊川悦司のようなタイプだと踏んでいる。いい感じに枯れていくと思わせておいて、また予測を裏切るんだろうな。

(文中敬称略)

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