原則休業でも「面従腹背」に転じた百貨店の憤怒 宣言延長ながら営業拡大、募る行政への不信感

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高島屋と比べるとやや控えめながら、他社でも同様に営業拡大の動きがみられる。三越伊勢丹は伊勢丹新宿本店など都内4店舗において、宣言の発令以降も「生活必需品」として食料品や化粧品の営業を続けてきたが、5月12日からは雑貨や靴、リビング用品なども加えた。

衣料品フロアは休業を継続しているが、アパレル大手関係者によると、三越伊勢丹は衣料品も早期に営業再開する可能性があるとして、一部の取引先に準備を促しているという。その関係者は「百貨店は各社とも、他社の動向と世間の反応を見ながら営業範囲を徐々に拡大していこうとしているようだ」と明かす。

「正直に要請に従うとばかをみる」

行政の休業要請におおむね従う姿勢を見せつつも、独自の判断で営業範囲を広げ始めた百貨店。「面従腹背」に転じた背景には、場当たり的な対応が続く政府や自治体への不信感がある。

とくに不興を買っているのが、スーパーやコンビニを除いて大半の商業施設が休業した昨年春と異なり、今回の休業要請対象が百貨店やショッピングセンターなど一部に限られることだ。

銀座や新宿、渋谷など都心の繁華街ではゴールデンウィークの間、要請対象外となった有名ブランドの路面店や家電量販店などが時短営業を続け、買い物客でにぎわっていた。大半の売り場の休業を余儀なくされた百貨店とは対照的だった。

休業要請が続く中、三越伊勢丹もじわり営業フロアを広げている。写真は3度目の緊急事態宣言が発令された4月25日の様子(記者撮影)

その様子を見た百貨店関係者は「これで路面店などにお客が集中して店内が密になれば、百貨店の休業に何の意味があるのか。正直に要請に従った結果、ばかをみることになる」と憤りを隠さない。

休業に応じた場合に支払われる協力金の額への不満も大きい。

3度目の宣言を受けて、政府から示された大型商業施設への協力金は当初、一律で1店舗当たり1日20万円だった。「少なすぎる」との批判を受け、店舗面積1000平方㍍ごとに1日20万円に変更されたものの、年間売上高が1兆円前後ある大手百貨店にはすずめの涙だ。

自社の資金繰りの問題以上に、売り場を失った取引先への影響も深刻視されている。休業で百貨店アパレルなどの経営難に拍車がかかれば、一段の売り場撤退も現実味を帯びてくる。

百貨店側には「感染対策を徹底しており、感染源になっていないのに休業を求められるのはおかしい」との意見も根強い。事実上の営業制限をかける以上、行政には、休業による感染拡大抑止の効果や協力金算定の根拠などの具体的な説明が求められている。

岸本 桂司 東洋経済 記者

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きしもと けいじ / Keiji Kishimoto

全国紙勤務を経て、2018年1月に東洋経済新報社入社。自動車や百貨店、アパレルなどの業界担当記者を経て、2023年4月から編集局証券部で「会社四季報 業界地図」などの編集担当。趣味はサッカー観戦、フットサル、読書、映画鑑賞。

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