パナソニック「縮小均衡決算」に復活は見えたか 6月に就任、「楠見新社長」を待ち受ける課題

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パナソニックはこれまで、車載関連で累計数千億円の巨額投資を継続したが、車載電池はテスラのEV生産が遅延した影響を受けたほか、車載機器は無理な受注増加に対応できず、逆に減損が発生するなど裏目に出た。

この車載事業の立て直しを担ったのが次期社長の楠見氏だった。

2019年4月に車載事業のトップに就任し、トヨタ自動車との角形電池事業の合弁事業化交渉や固定費削減で手腕を発揮。テスラの生産が軌道に乗り始めたことも追い風となり、2021年3月期の車載関連事業は109億円の営業黒字化を果たした。

パナソニックが繰り返した「前例」

津賀氏が「次のCEO(である楠見氏)には、できなかったことが山積みである、というスタンスでスタートしてもらって改善してほしい」というように、楠見体制初年度となる2022年3月期の収益は増収増益を見込んでいる。業績を牽引するのは車載事業や情報通信機器向けの電子部品、法人向けシステム事業だ。

パナソニックを9年間率いた津賀社長(左)(撮影:ヒラオカスタジオ)

車載事業では特にテスラ向けの電池事業が軌道に乗り、ラインの増設を含む生産能力拡大が進む。電子部品もコンデンサーや電子材料などコア事業の増産に向けて集中投資が行われる。法人向けシステム事業では4月にアメリカのソフトウェア企業・ブルーヨンダーを約7500億円で買収することを決めた。

いずれの事業も2022年4月に予定される持株会社化で主力事業に位置づけられている。持株会社化では各事業が高い専門性を目指して競争力を高める「専鋭化」がキーワードとなっており、「競合他社が追いつけない強みを持てるようにする」(楠見氏)方針だ。

過去のパナソニックでは、巨額の投資資金を回収することができず、撤退や足踏みを続けたプラズマテレビや車載事業のような前例が繰り返された。持株会社化の狙いはこうした前例が再現されることのないよう、各事業会社の「自主責任経営を徹底する」(津賀氏)ことも含まれている。

10月には持株会社化に向けた新組織ベースの体制になる予定で、各事業会社がどこまで権限を委譲され責任をもつかが焦点となる。

パナソニックを成長軌道に乗せることができなかった津賀氏の後を継ぐ楠見氏。5月27日に予定されている新CEOによる説明会で何を語るのか。成長戦略の描き方を含め、新CEOの力量がさっそく問われることになる。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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