「社内炭素価格」を取り入れる企業が増えるわけ 脱炭素の動きに対応、課題は投資判断への反映
加速する脱炭素化の動きに対応するため、「社内炭素価格」(インターナルカーボンプライシング、ICP)を採り入れる企業が少しずつ増えている。
ICPは、ビジネスの過程で排出する二酸化炭素(CO2)を各社が独自基準で金額に換算して仮想上のコストとみなし、投資判断等に組み入れる手法だ。
背景には、各国政府がCO2に価格を付けて(カーボンプライシング、CP)、排出量に応じて課税したり、排出量に上限を設けて超過分に罰金を科したりする制度が広がっている事情がある。
炭素価格使い、環境配慮の投資判断
OECDの調査によると、すでに46の国と35の地域(アメリカの一部の州など)がCPを導入済みだが、今後一段と増えるとみられる。企業がICPで自主的にCO2の排出量を抑制することは、世界的なCP拡大への備えになる。
繊維大手の帝人は2021年1月からICPを導入し、グループでの設備投資計画に活用している。同社CSR企画推進部の大崎修一部長は「環境を優先した設備投資はコストアップになりがちで、事業部からは敬遠されることがあった。今後はICPによってCO2の排出量などを考慮した投資を後押ししていきたい」と語る。
ICPを使うと、これまでとは違った投資判断が可能になる。例えば、設備投資を検討する際に、CO2の排出量が多いが、30億円で済む設備Aと、CO2の排出量が少ないが、40億円かかる設備Bがあったとする。性能が同等なら10億円安い設備Aが選ばれるはずだが、今後はICPを加味した金額で比較した結果、設備Bが選ばれることも十分にありうる。
極端な場合、ICPの仮想コストを組み入れた将来的なキャッシュフローがマイナスになれば、「投資不適格」として設備投資自体を見送る可能性もある。
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