銚子電鉄、社長が自ら「運転士」を兼ねる台所事情 本業は税理士、3度目の挑戦で技能試験に合格
2008年には、当時の銚子電鉄社長の引き立てもあり社外取締役の任に就いた。当時の社長というのは、ぬれ煎餅(せんべい)事業を軌道に乗せた立役者だが、高齢で体調が悪くなり、2011年の東日本大震災によって悪化した業績を立て直すための舵取りは難しい状況だった。
翌2012年の取締役会で、会社の指揮を当面執るピンチヒッターが必要であるとの判断が下された。顧問税理士だった竹本氏にも、銚子電鉄の懐事情は明白だった。
しかし、預金残高は50万円、借金は2億円。そんな倒産寸前の会社の社長を引き受けたいと思う人がいるわけもない。
すると、オブザーバーとして取締役会に来ていた顧問弁護士からこんな声が上がった。
「竹本さんに、数カ月の間だけでも一時的に代表に就任してもらってはどうだろうか」
長期的な改善計画を策定する必要があり、そのためには専門知識を持っているスペシャリストが適任であると、白羽の矢が立ったわけだ。この提案に他の役員たちも賛同し、竹本氏は「断り切れず」代表取締役に就任することとなった。
「数カ月の間なら……」
あくまでもワンポイントリリーフのはずだった。
社長兼電車の運転士
社長に就任してあることに気がついた。銚子電鉄は、慢性的な資金不足であると同時に、慢性的な人手不足にも苦しんでいたのだ。
銚子電鉄の運転士は4人。4人でダイヤをまわすとなると、体力的にもかなりの負担で、休みもとりにくい。本社や工務担当で運転免許を持つ予備運転士が数名いて、夕方の時間帯を中心に交代で乗務していたが、それでも人数は足りない。竹本社長は運転士にかかる負担を少しでも軽減しようと、自ら電車の運転免許取得をめざした。それが、2016年のことだ。
筆記試験は1週間ほどの勉強で難なく合格できた。しかし、技能試験は勉強だけでは足りず、不合格という残念な結果が続いた。
筆記試験合格から1年3カ月後、3度目の挑戦でやっと技能試験に合格、無事に電車の運転免許を取得した。本業の税理士の仕事、経営難の銚子電鉄の立て直しに奮戦しながらの快挙である。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら