増殖する訪日外国人、44年ぶり旅行収支逆転 円安進行、ビザ発給緩和、経済発展が大量入国を誘う
翌5月には旅行者数、旅行収支とも従来どおりの状況に戻ったが、それでも今回、観光客の増減に連動して旅行収支が逆転した意味合いは小さくない。日本人海外旅行者と訪日外国人の1人当たり旅行消費額が同程度の水準になったのを示しているからだ。
旅行収支のうちの支払額と受取額をそれぞれ、日本人海外旅行者数、訪日外国人数で割って、1人当たりの旅行消費額を算出すると、1996年は訪日外国人の約11.5万円に対し、日本人海外旅行者は約24.1万円だった。これが2013年になると、外国人14.2万円、日本人12.1万円と、僅差ながらも逆転している。
消費額逆転の流れは定着
バブル期直後まで、多くの日本人にとって海外旅行は一大イベントだった。宿泊日数も多く、渡航先では友人や職場の同僚への土産の購入に奔走していた。
だが、90年代以降のデフレ経済下でこの傾向が一変。宿泊日数は少なくなり、現地での買物費用も減少した。職場で土産を配る慣習は廃れ、海外旅行が人生のイベントではなくなった。
一方、自国経済の発展に伴って、アジア諸国からの旅行者が日本で消費する金額は、増加の一途をたどっている。
銀座を歩く彼らの両手には、はち切れんばかりに商品が詰め込まれた、「ユニクロ」や「アバクロ」といったファストファッションの袋がぶら下がっている。
さらに、訪日外国人を増やしたい日本政府は今年度、インドネシアへのビザ免除と、フィリピンとベトナムに対するビザの大幅緩和を行う。インドにも夏までに数次ビザの発給を開始する計画だ。旅行者数についても、増加基調が続くだろう。
つかの間の旅行者数と旅行収支の逆転劇だが、それは同時に、日本を取り巻く旅行・観光産業の構造変化を物語っている。日本人の1人当たり旅行消費額が訪日外国人を下回る傾向は定着した。旅行収支の再逆転はもう遠い未来の話ではない。
(「週刊東洋経済」2014年7月19日号<7月14日発売>掲載の「核心リポート03」を転載)
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