Uber→WeWork立ち上げた39歳が選んだ「次」 日本の大企業と世界のベンチャーをつなげたい

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オープンイノベーションという言葉を聞くようになったのはここ数年だと思いますので、ユニコーン企業の成功例はまだなかなかないと思います。ただ、ベースは整ってきています。また、これまでもデバイス、ハードウェア1つを取ってもその中にはいろいろな会社の技術が実は入っていますが、メーカーが、「○社の技術を使って⋯⋯」とは公表しないケースはあります。

2月から3月まで、スクラムベンチャーズが投資しているMiles(マイルズ)というアメリカのスタートアップとJR東日本とあいおいニッセイ同和損保が一緒にスマートフォンの位置情報から移動手段を自動的に判別するアプリの実証実験を行いました。コロナ禍における人々の移動を分析し、密を回避する取り組みです。世の中が変わってきていると感じた事例の1つです。

シリコンバレーが「規格外」な理由

――東京にダイナミックなスタートアップが生まれにくい理由は何でしょうか。

スタートアップに重要なのは人、金、モノ。金に着目してみると、アメリカでのスタートアップ投資の額と日本国内でのスタートアップ投資の金額は約24倍ぐらい違います。金が集まるということは、それだけその資金を使ってグロースに投資ができ、大きくなる可能性があればリターンも大きい。そこに夢を抱いて飛び込んでくる優秀な人材も多い。しかもアメリカ国内だけではなく、世界中からそういった人材が集まってきています。

また、ユニットエコノミクスと言って、ユーザー1人当たりのコスト構造を中心に考え、事業を長期的に評価するモデルが根付いており、現状赤字であっても、1ユーザー当たりの収益が高いと見込まれれば投資家は投資する。そこがアメリカのスタートアップ界がこれだけ盛り上がっている1つの理由だと思います。

出資も例えばシード出資といって個人でアーリーステージのスタートアップにお金を入れることも一般的。日本だとお金持ちが投資するイメージありますけど、アメリカだとそうでなくても投資することもあります。

マインドセットも違う。アメリカでは事業を興して、それが成功しても失敗してもまた次の事業を始めるシリアルアントレプレナー(連続起業家)が多数います。失敗することによって学び、パワーアップしてまた次の事業を始める。失敗をポジティブにとらえているんです。

半分笑い話ですけど、スクラムベンチャーズが投資したある会社が倒産した時に、日本だと株主に謝ると思いますが、その社長は「今回はダメだったけど次はこんな事業をやるから、そっちに投資しないか」と言ってきたそうです。ちょっとした考え方の違いですが、そうやって当たらないこともあるけれども、何度もチャレンジすれば当たるので、お金も集まるんですよね。

――日本でもそうした市場は育つと思いますか。

日本でも素晴らしいいろいろなベンチャーが立ち上がってきていますし、スクラムベンチャーズとしても日本のスタートアップにも投資を始めています。すべての分野で勝つ必要はないですし、GAFAのようなプラットフォームでなくても、日本には日本流の戦い方があります。

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