ローランドMBOの顛末、混乱の根因は? 食い違う証言、準備不足の否めないTOB
過半数の賛成でTOBに応じることを決めた5月1日の理事会については、梯氏と、財団専務理事である大村泰之氏との証言が食い違う。梯氏によれば、同理事会は「理事長のみが招集権があり、大村氏の招集した5月1日の決議は無効。心配になって理事会の様子を見に行ったら、それをもって理事会が成立したとみなされた」。
大村氏によれば、「理事会の招集は理事長の承諾を得た上でのこと。記名投票も理事長の指示に従ったのに、投票結果が意に反するものだからと決議無効を主張するのは、理解に苦しむ」。
今回のTOBでは、買収者以外の少数株主を追い出す、スクイーズアウトの手法が使われる。TOBが失敗しないように、応募契約を結ぶなどして、3~4割の議決権を確保しておくのが常道だが、今回はたった9%からスタートしている。しかも、まとまった株を保有している静岡銀行(20万株)やブラザー工業(14.7万株)に、応募契約をなぜかとりつけていない。
TOB価格の妥当性は
それでもTOB価格が高ければ問題はない。しかし、早稲田大学大学院の服部暢達客員教授によれば、TOB価格は約2倍の3600円が妥当だ。1875円というTOB価格では、PER(株価収益率)が7倍弱と東証平均の15倍を大きく下回る。
ポイントはローランドの金融資産をTOB価格に反映しているかどうか。服部教授は、金融資産を反映するのは当然なのに、今回のTOBではそれが考慮されていないと指摘する。企業価値算定を依頼されたアミダスパートナーズや、その妥当性を審査した第三者委員会は、なぜ金融資産を見過ごして計算したのだろうか?とクビをかしげる。
企業価値算定を請け負ったアミダスパートナーズに確認してみたところ、以下のように取材を断ってきた。
「公表されておりますとおり、弊社はローランド株式会社様の第三者算定機関として、ローランド株式会社様に株式価値算定書を提出しております。したがいまして、大変申し訳ありませんが、当該算定内容につきまして、貴社のご質問やインタビューにはお答えできかねますことをご了承いただければ幸いです。」
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