「韓国に大差つけられた日本映画界」低迷の真因 なぜ邦画は「アカデミー賞」に選ばれないのか?

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韓国では長編映画を作った実績のある監督、脚本家であれば、このトリートメントの段階から援助をしている。しかし、日本の文化庁などによる助成金は、脚本完成後、製作会社が決まってから申請する方式で、脚本を作っている間は援助が出ない。奈良橋さんも「日本も韓国のようにリスクを取って企画段階からお金を出してほしい」と呼びかける。

現在、自分の企画で実写映画を作ろうとする監督の経済状況は厳しい。1本あたりのギャランティは数百万円で、年収換算すれば日本人の平均年収436万円にも届かない。そして、映画が完成してヒットしたとしても、興行収入に比例してのインセンティブもない。

「僕が助監督になった15年前は、超大作と低予算映画の中間に製作費1億円ぐらいの映画が少なからずありましたが、現在はほとんどなくなってしまい、格差が広がっています。数千万円の低予算映画だと、必然的に監督のギャランティも少なくなり、とてもそれだけでは生活できない。そういった状況が続くと、監督も消費されている感があって、モチベーションが保てなくなりますよね」(片山監督)

「映画監督たちのうめき声が聞こえる」

奈良橋さんも「日本では映画監督たちのうめき声が聞こえる」と言う。現状、国の支援が期待できないならば、世界的な企業に成長した配信サービスと組むのが打開策として考えられるのだろうか。奈良橋さんも片山監督もNetflixのオリジナルシリーズで仕事したことがあり、その潤沢な予算とクリエーティビティの高さを実感したという。

「私が日本側のキャスティングを担当した『Giri/Haji』はイギリス制作ですが、プロデューサーが日本文化を尊重してくれ、日本人同士のセリフは日本語のままに。ひと昔前は考えられなかった画期的なことで、アジア人にとって門戸は開かれていると思います。クリエーターも配信サービスにどんどん企画を持っていってほしい」(奈良橋さん)

「すでに映画館での興行収入だけで儲けが出る時代ではないので、配信や有料チャンネルに才能が集まるのは当然の流れ。映画監督にとっては世に出ていくひとつのルートになるでしょうね」(片山監督)

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