ワクチン格差が世界経済の回復を下押しする

世界の新規感染者はパンデミック後最多を記録

新型コロナウイルスが世界で再び猛威を振るっており、高所得国と低所得国との間で世界経済の分断がさらに進む恐れが出ている。コロナ感染がさらに広がる、あるいは需要の主な源泉となってきた国・地域がつまずけば、世界経済の成長全体を損ねる可能性もある。

世界で確認されたコロナ新規感染者は先週、パンデミック(世界的大流行)が始まって以降で最多を更新した。世界保健機関(WHO)は今週、欧州を除いて新規感染が増えていると警鐘を鳴らしており、急増するインドだけでなくアルゼンチンやブラジル、トルコでも感染が広がっている。

ニューデリーの仮設コロナ隔離施設(4月21日)

コロナ感染を制御できなかったり、ワクチンを均等に配分できなかったりして新たな変異株の拡大を許し、新興国から先進国にも広がる恐れがあることを踏まえると、この点は回復ぶりが目立っていた世界経済に影を落とす。

こうしたシナリオが実際には顕在化しなかったとしても、経済の持ち直しペースに差が生じることで外需が伸び悩み、サプライチェーンも不安定化することによってワクチン接種が進む国でも下押し圧力がかかるだろう。国際通貨基金(IMF)は先月、今回の公衆衛生危機を脱する上で進展のペースが速まらなければ、回復局面は2025年までに9兆ドル(約972兆円)の増加分を失うとの見方を示した。

パンデミック前は世界の成長に占める新興・途上国の割合が3分の2に達し、世界の人口に占める比率も約86%に上っていた。世界銀行は今週、持ち直しが勢いを失う可能性に備える必要があるとこうした国々に指摘した。

スコシア銀行のアジア太平洋経済担当責任者、テューリ・マカリー氏は「パンデミックが終わりから程遠いことは明らかであり、コロナ新規感染の急増は世界経済の現実直視になる」と指摘。「多くの低所得国がコロナ感染症に関連した深刻な課題に引き続き直面しており、『正常化』までの道のりは長い」と話す。

カリフォルニア州リッチモンドのワクチン接種会場で準備する医療従事者(4月15日)

ブルームバーグの集計データによると、世界でこれまでに9億4400万回余りのワクチン接種が行われたが、高所得国と低所得国の間で接種ペースに大きな差が出ており、ワクチン配分に偏りが生じている。

野村ホールディングスのグローバル市場調査責任者、ロブ・スバラマン氏は「私はこれをウイルス変異とワクチン接種の競争と捉えている」と説明。「1918年のスペイン風邪が米国から始まり、それから欧州へと広がったと考えられている一方で、最も大きな影響を受けた国は最終的に新興市場だったということを多くの人は知らない。歴史は繰り返すという不吉な兆候だ」と述べた。

原題:Global Virus Resurgence Threatens Vigorous Growth Momentum(抜粋)

著者:Enda Curran、Eric Martin

関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
  • 新型コロナ、長期戦の混沌
  • 新競馬好きエコノミストの市場深読み劇場
  • 就職四季報プラスワン
  • 森口将之の自動車デザイン考
トレンドライブラリーAD
人気の動画
「睡眠不足を甘く見る人」が払う体への代償
「睡眠不足を甘く見る人」が払う体への代償
保険営業 ノルマ未達なら「雇用契約打ち切り」の無惨
保険営業 ノルマ未達なら「雇用契約打ち切り」の無惨
ストロング系チューハイの光と影
ストロング系チューハイの光と影
無神経すぎる人に「ちょっとだけ言い返す」技術
無神経すぎる人に「ちょっとだけ言い返す」技術
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
「未来を知る」ための読書案内<br>ベストブック2021

先を見通せない日々が続きますが、本を開けばアフターコロナ時代のヒントがあふれています。本特集では、有識者や経営者、書店員らが推薦した200冊を掲載。推薦数の多い順にランキングしました。あなたにとっての珠玉の1冊を探してみてください。

東洋経済education×ICT