結婚は、“決断“だ。結婚相談所で、仮交際から真剣交際に進むのは、より結婚を現実に引き寄せることになる。結婚への意識を高めるためにも必要だ。その決断を今できない人は、数カ月後も1年後も、結婚を決断しないだろう。
その予感は的中し、それから数週間後に、義和の相談室から交際終了が来た。頼子が義和との結婚を夢見ていたことはわかっていたので、結果をメールやLINEで伝えるのは酷だと思い、電話をした。すると、彼女は泣き出してしまった。
そして、先週末のデートでの義和の様子を語り出した。
渋滞に不機嫌になった揚げ句…
義和の運転する車で、郊外の山の頂にある有名な神社にドライブデートに行った。そこは一時メディアでも紹介されて、一大ブームを巻き起こしていたのだが、もうブームも去っているだろうと2人は思っていた。ところが、思いのほか混雑をしていて、山道が渋滞しまったく進まなかった。義和は、次第にイライラし始め、不機嫌になっていったという。
「こんなんじゃたどり着かないよ。帰ろう」
ぶっきらぼうに言うと、車をUターンさせて帰路についてしまった。帰り道は、ムスッとしてほとんど口を開かず、自分の家の最寄り駅に頼子を下ろすと、そのまま走り去ってしまった。頼子はそこから電車に乗り、1時間かけて自宅に戻ってきたという。
そして、それから1週間はLINEのやりとりがあったものの、週末には交差終了が来た。
「LINEもそっけなかったので、こうなることは、なんとなく予想はついていたんですけど……」
涙声で言う頼子に、私は言った。
「渋滞にイライラして、目的地に行くことを諦めて引き返したかと思ったら、自分の最寄り駅で女性を降ろして、さっさと自分は走り去ってしまう。あまりにも自分勝手じゃない? そんな男性と結婚したら、先が思いやられましたよ。今つらいかもしれないけれど、交際終了になってよかったわよ」
そんな私の言葉は、このとき頼子には届いていなかっただろう。失恋したときには、ただただつらい。悲しい。相手を好きになっている気持ちは、簡単に消えない。
「こんなにつらい思いをするなら、もう婚活はやめたいです」
消え入りそうな声で言う頼子に、私は言った。
「今はつらいですよね。少し落ち着いたら、一度ゆっくり面談をしましょう」
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