ドイツ最古の銀行幹部が語る国際M&Aのゆくえ 日本の中小企業は「グローバル化」に商機あり

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――どういうことですか?

コロナを経て、日本でも多くの投資家がESG重視に舵を切った。「投資はすべてESG基準にする」と宣言する企業も生まれている。それはそれで歓迎すべきことだが、みんなが一斉に同じ方向を向く時は、資産運用の観点で言うとリスクだ。

同じ指標、同じデータを参考にする結果、同じようなポートフォリオができあがっていく。ポートフォリオは分散できないと、真のリスク管理とは言えない。

ESGスコアだけを基準に投資すると投資先の地域が偏ったり、地政学的なリスクを見落とすことにもなりかねない。

日本に眠る「隠れたチャンピオン」企業

――日本とドイツには創業100年以上の老舗企業が多いという共通点があります。日本の中小企業の多くは大手企業の下請けにとどまり、生産性が低いまま放置されています。グローバル展開も遅れています。

日本もドイツも、長い歴史を持つ中小企業が多い。独自の技術を磨き上げ、グローバルニッチ市場で存在感を発揮している企業もある。こうした企業を私は「隠れたチャンピオン」と呼んでいる。

ただ、日本とドイツの中小企業には1つだけ違いがある。ドイツの中小企業の多くは自前でグローバル化を成し遂げてきた。1871年のドイツ統一まで複数の国・地域に分かれていたので、中小企業は域外に販路を広げざるをえなかった。そうしたグローバル展開のDNAが現在のドイツの中小企業にも色濃く残っている。

これに対し、日本の中小企業はこれまで大手企業の下請けに甘んじてきた。とても優れた製造技術があるのに、自前で海外展開ができていない。

メッツラーは、日本の中小企業のグローバル化をお手伝いしたい。日本支店にM&Aアドバイザリーの部署はないが、欧州に展開したい中小企業があればドイツ本社のM&Aアドバイザリーチームにつなぐことができる。

2020年にはメッツラーグループとして、ドイツの再生可能エネルギー企業や部品メーカーを買収した日本企業のアドバイザリーをやった。こうした日独クロスボーダーのM&Aは増えている。私も日本企業のグローバル化に全力を尽くしたい。

野中 大樹 東洋経済 記者

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のなか だいき / Daiki Nonaka

熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年に東洋経済新報社入社。週刊東洋経済編集部。

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