ドイツ最古の銀行幹部が語る国際M&Aのゆくえ 日本の中小企業は「グローバル化」に商機あり

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――メッツラーグループは創業以来、メッツラー一族が100%の株を保有しています。そのことは投資戦略にどのような影響を及ぼしていますか。

長年堅持してきた独立性こそがメッツラーグループの強みだと考えている。何よりも大切にしているのは長期的な視野に基づいた運用戦略だ。個々の顧客ニーズに寄り添った形での中長期的な分散投資をすること。

ひろき・ヴィースホイ/1988年生まれ。ドイツのマンハイム大学を卒業後、コメルツ銀行、ロスチャイルド・アンド・カンパニーを経て、2018年にメッツラーグループ入社。メッツラー・アセットマネジメント副社長を経て、2021年4月から現職(撮影:今井康一)

株式市場は上下に変動する。大事なのは、ダウンサイドリスクを最小限に抑えるための方策を織り込んでおくことだ。間違っても「一発勝負で大きな賭けに出よう」という判断はしない。

メッツラーグループは、顧客に対して明らかにリスクのある投資は勧めてこなかった。リーマンショックが起きる前から、ABS(資産担保証券)のようなリスクのある資産を顧客に販売してこなかった。

短期的な利益を求める資本市場の圧力にさらされずに、こうした価値重視の経営ができるのはファミリー企業だからだ。

もちろん長期的には利益を出さなければならないが、リスクが大きいとわかっている商品を販売してまで利益を出すことはわれわれのポリシーに反する。アメリカで流行している不透明でリスクの高いSPAC(特別買収目的会社)のような短期的なトレンドには乗らない。

教会の資産運用を通じてノウハウを蓄積

――コロナを経て、ESG投資の機運がますます過熱しています。メッツラーグループは以前から社会や環境を重視する投資をしてきました。

メッツラーは50~60年ほど前から教会の資産運用を担っている。教会は以前から、環境や社会に重きを置く投資を求めていた。人の健康を害する恐れのあるたばこ業界や、児童労働等で利益を上げる業界には投資しない。そうした教会のニーズに応えるために、メッツラーは早い段階で「投資先がESGを重視しているか否か」を見極めるノウハウを積み重ねてきた。

投資プロセスにESGという考え方を反映させることで、長期的なパフォーマンス向上のみならず、投資の下値に対する備えにもなる。ESG戦略が対象とするのは、強く健全なバランスシートを持ち、風評被害や規制リスクにも耐えられる企業だからだ。

ただ、昨今のように急速にESG投資が拡がると、別の観点から懸念を抱いている。

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