商船三井の温室効果ガス排出ゼロ支える技術とは メタネーションはグリーン投資の目玉となるか
温室効果ガスへの規制強化で価格競争力が増す
メタネーションは約1世紀前にフランスの化学者が発見した反応だ。まず、風力や太陽光など再生可能エネルギーを利用し、水を分解して水素を得る。次に水素と回収したCO2を反応させ、メタンを生成する。そのメタンは、船舶燃料や都市ガスなどに活用できる。
これまではメタン合成のためのコストや輸送、技術的な問題でメタネーションは試験段階におおむねとどまっていた。しかし、GHG排出実質ゼロのエネルギー需要が増える中で、変化が起きるかもしれない。
海運にとって、GHG排出実質ゼロの燃料を探し出すことは非常に重要だ。船配備の太陽光や風力発電システムでは大型船舶を動かすのに十分なエネルギーを生み出せない。国連の専門機関である国際海事機関(IMO)は18年、今世紀中のできる限り早期に国際海運分野のGHG排出量をゼロとする目標を策定した。国土交通省の目標は28年までに排出量ゼロの船舶を航行させることだ。
商船三井の理事で技術部担当執行役員補佐の大薮弘彦氏は「国土交通省の目標を視野に、7-8年の間で形にする方向」とし、同社主導のグループについて「実現可能にするためには何をすべきか課題を挙げて、ステップ・バイ・ステップで進んでいる」と説明。同グループはこの実現可能性を探る活動の現時点での成果を、今年夏ごろ造船・海運系学会誌に掲載予定という。
世界中のプロジェクトの大半は欧米勢
日本では再生可能エネルギーの価格が高いため、メタンは海外で合成する必要が生じるかもしれない。そうなると、CO2運搬のための特別な船舶開発が必要となり、商業化の鍵を握るのは水素の価格とCO2長距離輸送の実現可能性となる。それでも規制強化でGHG排出抑制ができない場合のコストも上昇するのに伴い、将来的には「CO2排出量の少ない燃料に価値が出てくるようになってくる」と大薮氏は語り、このような価値の転換は「商業化を含め次の段階に進む上で重要」と付け加えた。
世界全体ではメタネーションを巡り進行しているプロジェクトが19年時点で38件前後あった。その大半が欧米のプロジェクトだったことがドイツのレーゲンスブルクにある工科大学の調査で分かっている。日本では、政府が50年のGHG排出実質ゼロを目標とし、2兆円のグリーン投資促進ファンドを設置したことなどでメタネーションへの関心はさらに高まりつつある。