――近藤先生は昨年春以降も、DP号のような、あるいはそれ以上に悲惨なクラスターの現場を歩いていますね。
近藤:DP号のような現場は初めてで苦労はしましたが、結局、船内で亡くなる人はいませんでした。
ところが、全国の病院や高齢者施設でクラスターが発生し、多くの人が亡くなっています。それでDMATとして支援に入っています。われわれが早期に支援に入れると効果が上がるということがわかってきました。
――専門家としての考えを、押しつけないからですかね。
近藤:クラスターが出た現場は例外なく傷ついています。だから、現場ではまず「皆さんは悪くない。これは災害なんですから」と言います。
そうして、ホワイトボードにスタッフから聞き取ったことを書いていきます。可視化してスタッフ自身が問題点を整理できれば、解決の道筋は自然に見えてきます。
そうして新型コロナには「5つの死」があると気づきました。
➀恐怖から来る混乱で通常の医療・介護ができなくなることによる死亡、➁負担の増加と感染によるスタッフ数の減少があいまって受給バランスの崩壊したことによる死亡、➂新型コロナ肺炎での死亡、➃元々状態がよくなくて最後の死因がたまたまコロナだった死亡(「最後の一滴死亡」と呼ぶ)、➄それ以外の死因がついた新型コロナ患者の死亡、です。
災害医療の観点からは、どんな亡くなり方をしているのかを調べることが大事なんです。
コロナ患者の多くは「最後の一滴死亡」
――どんな分析結果が出ましたか。
近藤:深刻な医療危機に直面していた札幌市にDMATが支援に入った期間(2020年11月8日~2021年1月21日)のデータが得られました。病院・施設にいた人は、コロナの「患者数」でみると札幌市内全体(1万0010人)の1割程度(985人)なのに、「死者数」だと市内全体(223人)の76%(171人)を占めていたのです。
またクラスター(集団感染)が発生しその後亡くなった患者に限って、その「感染した場所」を調べると、療養型病院47%、一般病院が29%、精神科病院7%、施設17%で、療養型病院が半数を占めていました。さらにクラスター発生病院で感染した死亡者のうち72%は「寝た切り状態」だったことがわかりました。これは期間中の札幌市内の全死亡者(223人)の45%に当たります。
つまり、コロナ死亡患者の多くは、さっきの5類型でいえば、➃「最後の一滴死亡」に当たるということです。通常の年でいえば肺炎やインフルエンザで亡くなったケースです。今、第4波に向けて国のコロナ対策は高齢者施設に目が向き始めていますが、亡くなっているのは療養型病院だということを指摘しておかねばと考えました。
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