日立、デジタル企業転換へ「1兆円買収」の成否 次期社長の呼び声高い「エース」が買収を主導
今後のルマーダ拡大で欠かせないのが、開拓余地が大きい海外市場だ。日立はここ数年、アメリカで空気圧縮機大手やロボットSI企業など産業関連大手をそれぞれ1500億円規模で矢継ぎ早に買収し、アメリカ市場への”アクセス権”を手に入れてきた。ルマーダを活用することで、これに加えて保守サービスなどを拡大していきたい考えだ。
2020年7月には重電大手スイスABBの送配電事業も1兆円規模で買収し、再生可能エネルギーの拡大で需要が高まっているエネルギーの分散化やデジタル化などでルマーダの世界展開を模索している。
今回買収するグローバル社は製造現場などでのソフトウェア開発ノウハウを多く持っており、ルマーダとの相乗効果が見込めると判断。グローバル社の顧客基盤を一気に取り込むことで、「世界のルマーダにする」(東原社長)と意気込む。
のれんは7100億円、減損リスクも
ただ、新興企業を1兆円で買収することについて、市場は懸念を示し、3月31日の日立の株価終値は前日比7%超下落した。日立は買収資金のうち、2000億円は手元資金で、残り8000億円は借り入れと社債を発行してまかなう。
のれんは7100億円にのぼり、買収後の成長が見込み通りにいかなければ、将来的に減損処理を迫られるリスクもある。
買収価格について、東原社長は「企業価値を多様な側面から評価し、妥当だと考えている」と指摘し、「まず収益性、次に現状のIT部門との相乗効果を見極めた。そのうえで、産業や自動車分野への相乗効果を見極めた」と評価額は妥当であると反論する。
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