年収アップを目的に転職するのが危険な理由 自ら「値踏み」し適正な年収を知ることが大切
しかし、多くの場合、「転職で年収UP」は危険だと思ってください。
お金は後からついてくるものであって、それを目的にすることは、極めて危ないことです。もし、その人の「実力以上」の年収になってしまったら、その後には、年収ダウンかリストラが待っているかもしれません。
もし複数の企業から内定を得て、「最も年収が高いところにしよう」と思ったとしても、「本当にそれが正解か」と、疑ってかかっていただきたいのです。
「自分を最も高く評価してくれた」として高い年収提示をした会社を選ぶこともありますが、その会社の状況、そこでの仕事は本当にやりたいことなのか、責任や裁量の範囲などを確認せずに、「年収が高いから」だけで転職先を決めてしまったら、あなたがそこで価値を出せる仕事ができるかどうかはわかりません。
「せっかく転職するのだから……」というのも、本当によく聞きました。もちろん現在の会社が安定しており、リスクのある転職、そして規模の小さいベンチャー企業に転職しようというときであれば、「そのリスク分、年収を積んでほしい」というのもわからないではありません。
しかし、「せっかく」はその人の事情であって、採用側の企業の事情ではありません。リスクを持ち出すのであれば、転職しないほうがよいのではないかとも思います。そして「せっかく」というのは、「転職=年収UP」だと考えているから、出てくる言葉のような気もします。
「家族を海外旅行に」については、採用側としては、「あなたの家族に海外旅行に行っていただくためにあなたを採用するわけではない」ので、「そうなったらいいですねえ」とは言いますが、「そこが本質ではないでしょう」と考えています。
また大企業から中堅・ベンチャー企業へ転職する方に、この傾向は多いように思います。大企業は年収水準が高いので、同じ年収かそれ以上という希望は、中堅・ベンチャーには厳しいものです。高い年収水準を維持したいのであれば、転職しないほうがよいでしょう。ただ、黒字リストラも増えている昨今、その年収をずっと維持することは難しいかもしれません。
自身の適正な年収を言える人は高評価
その前提で、転職に際しては、自身の適正な年収を知っておくことが大切です。1つの方法として、人材紹介会社に相談するのもいいでしょう。しかし、人材紹介会社は、「転職時提示年収×◯◯%」という成功報酬型で収益を上げているので、「高く売ったほうが人材紹介会社は儲かる」わけで、「年収を下げましょう」とはなかなか言わないかもしれません。
自身の適正な年収はどのくらいなのか、という水準を自ら「値踏み」できる人は信頼できます。それはビジネスパーソンとしても優秀であることをある種意味します。市場が見えている、自身の価値が見えているわけですから。