年収アップを目的に転職するのが危険な理由 自ら「値踏み」し適正な年収を知ることが大切

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転職をする要因はさまざまです。なかでも「転職して年収をUPさせたい」という動機ほどダメなものはないと人事コンサルタントの西尾太氏はいいます。その理由とは?(写真:anmistu/PIXTA)
人事コンサルタントとして、1万人以上のビジネスパーソンの昇格面接や管理職研修を行い、300社以上の企業の評価・給与・育成などの人事全般に携わってきた西尾太氏による連載。エンターテインメントコンテンツのポータルサイト「アルファポリス」とのコラボにより一部をお届けする。

私は仕事として企業人事を経験してきた中で、新卒採用だけでなく、中途採用も数多く経験させていただきました。自身も転職をしていますので、応募者としての立場も経験しています。

ビジネスパーソンが転職をする要因はさまざまです。キャリアアップ、自分のしたい仕事に就きたい、現在の会社の将来性が不安……、などが理由として多かったと思います。

アルファポリスビジネス(運営:アルファポリス)の提供記事です

しかし、中途採用担当者として、いちばん「どうなのかなぁ」と思っていたのは、「転職して年収をUPさせたい」という動機です。

そんな中で私は採用担当として面接するときに、中途採用の面接の場合は最後のほうで「これ以下だと転職できないという年収水準はどのくらいですか」という質問を必ずしています。

「希望年収はどのくらいですか」という質問でもよいのですが、「希望年収」は「高いほうがよい」に決まっていますので、その人のお金に対する考え方はよく見えません。

「これ以下だと厳しいという年収水準」を問うことで、その応募者が、自身の年収を「どのくらいが適正かと思っているか」を確認することができるのです。また、年収が下がってでもその会社に転職したい、その仕事がしたい、という志望の強さを見ることもできます。そして同時に、その人の金銭的背景(教育費やローンなど)についても推察することができます。

年収UPを目的にしてくる人には「黄色信号」

中途採用の面接の場で、現在のその方の年収より高い年収を言ってくる人については、私は「黄色信号」を点滅させていました。「現在の年収以上です」や、「せっかく転職するのですから、いまは800万円ですが、1000万円は欲しいですね」といった感じのことを言う方です。

「転職を志望された理由はどのようなことでしょう」ということは、その前段にも質問していますが、「年収のUPです」と言われると、私は「この人、大丈夫かな?」と思ってしまいます。また、中には「家族を海外旅行に連れていくためには、今の年収だと足りません」とおっしゃる方もいらっしゃいました。

もちろん、採用担当者としても、その人の現在の年収が、「少ないな」と思っていれば、「年収UP」を「それはそうだろうな」と思います。業種によっては、「え? そんなに安いの?」という方も中にはいます。

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