年収アップを目的に転職するのが危険な理由 自ら「値踏み」し適正な年収を知ることが大切
私は仕事として企業人事を経験してきた中で、新卒採用だけでなく、中途採用も数多く経験させていただきました。自身も転職をしていますので、応募者としての立場も経験しています。
ビジネスパーソンが転職をする要因はさまざまです。キャリアアップ、自分のしたい仕事に就きたい、現在の会社の将来性が不安……、などが理由として多かったと思います。
しかし、中途採用担当者として、いちばん「どうなのかなぁ」と思っていたのは、「転職して年収をUPさせたい」という動機です。
そんな中で私は採用担当として面接するときに、中途採用の面接の場合は最後のほうで「これ以下だと転職できないという年収水準はどのくらいですか」という質問を必ずしています。
「希望年収はどのくらいですか」という質問でもよいのですが、「希望年収」は「高いほうがよい」に決まっていますので、その人のお金に対する考え方はよく見えません。
「これ以下だと厳しいという年収水準」を問うことで、その応募者が、自身の年収を「どのくらいが適正かと思っているか」を確認することができるのです。また、年収が下がってでもその会社に転職したい、その仕事がしたい、という志望の強さを見ることもできます。そして同時に、その人の金銭的背景(教育費やローンなど)についても推察することができます。
年収UPを目的にしてくる人には「黄色信号」
中途採用の面接の場で、現在のその方の年収より高い年収を言ってくる人については、私は「黄色信号」を点滅させていました。「現在の年収以上です」や、「せっかく転職するのですから、いまは800万円ですが、1000万円は欲しいですね」といった感じのことを言う方です。
「転職を志望された理由はどのようなことでしょう」ということは、その前段にも質問していますが、「年収のUPです」と言われると、私は「この人、大丈夫かな?」と思ってしまいます。また、中には「家族を海外旅行に連れていくためには、今の年収だと足りません」とおっしゃる方もいらっしゃいました。
もちろん、採用担当者としても、その人の現在の年収が、「少ないな」と思っていれば、「年収UP」を「それはそうだろうな」と思います。業種によっては、「え? そんなに安いの?」という方も中にはいます。