「宇宙葬がお墓と同じ存在になる日がくる」 米ベンチャー、エリジウムスペースのCEOに聞く

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1977年フランス・パリ生まれ。欧州の宇宙機関ESAを経てNASAに入局。8年間ハッブル宇宙望遠鏡などのミッションに携ったのち、2012年にエリジウムスペース設立

愛する人を宇宙に送る――。米シリコンバレーに拠点を置くベンチャー企業、エリジウムスペースが今秋、遺灰を宇宙に埋葬する「宇宙葬」サービスを開始する。

10センチ四方の小型衛星の中に、顧客の遺灰を納めたアルミニウム製のカプセルを入れ、ロケットに搭載して宇宙へ送り出す。価格は1990ドルと、既存サービス(5000ドル)より格安。昨年10月に受付を始め、これまでに約40人が応募。今秋までに最大100人を集める計画だ。

小型衛星の低価格化などを背景に宇宙ベンチャーが数多く生まれる中、エリジウム社はどうやって顧客の関心を引きつけるのか。来日したNASA(米航空宇宙局)出身のエンジニアである、トマ・シベ創業者兼CEOに話を聞いた。

 宇宙葬への関心は高い

――宇宙ベンチャーはたくさんありますが、宇宙葬に着目した理由は。

私は2012年にシリコンバレーへ移り、宇宙関連の事業を始めようと思ったが、当時は多くの宇宙ベンチャーがまさに立ち上がっているころだった。その中で他社とは違うことをしようと考えたときに、多くは宇宙を語る際、技術や科学的な側面を話すことはあっても、宇宙の美しさや価値に語っているところはなかった。

しかし、多くの人は星や月といった宇宙の美しさに心を打たれる。そこに訴えるものがないかと考えた。そこで、宇宙葬というアイデアを思いつき、市場調査を行ったところ、潜在需要も小さくないことがわかった。

昨年10月に日米で受付を始めた際、両国の多くのメディアに出たことで注目を浴びた。これが何を意味するかというと、私たちのサービスがとても多くの人の心をつかんだということだ。大事な人を失った家族にとって、非常に意味や意義のあるサービスだと受け止められている。既存の葬儀サービスとは別に、新しいモノを求めている人もいるということだ。

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