テロ対策不備、東電に原発運営の資格はあるか 侵入検知設備の故障を放置、社員の不正も
東京電力ホールディングスの柏崎刈羽原子力発電所で、テロリストなど外部からの不審者の侵入を検知するための設備の複数が故障したまま、十分な対策が講じられずに放置されていたことがわかった。
原子力規制庁の検査を機に、2020年3月以降、16カ所で設備が故障していたことが判明。そのうち10カ所では機能喪失をカバーする代替措置が不十分な状態が30日以上続いていた。
事態を重く見た原子力規制委員会は3月16日、柏崎刈羽原発に関する安全重要度を、最も深刻な区分である「赤」と判断したうえで、核セキュリティ(核物質防護)の水準が「最低レベル」にあるとの暫定的な評価を公表。その2日後の18日、東電が受け入れて評価が確定したことを踏まえ、規制庁は今後、延べ2000時間に及ぶ追加検査を実施し、原因究明などにあたる。
問われる事業者としての適格性
核セキュリティにも詳しい原子力コンサルタントの佐藤暁氏は「『赤』という判定は日本で初めてというだけでなく、同種の検査制度を20年以上にわたって運用しているアメリカでも近年例がない。原発事業者としての適格性が問われる事態だ」と指摘する。
今回の不祥事に先立ち、柏崎刈羽原発では、中央制御室に立ち入る資格を持つ社員が、同僚のIDカードを勝手に使い、同僚になりすまして入室していたことも判明している。この問題では、委託企業の警備員が社員の要求に応じて入室データを書き換えていたこともわかった。
前出の佐藤氏は「(不正ID使用は)検査設備の機能喪失放置よりも悪質で、東電社内のモラルの低下を物語る」と指摘する。そのうえで「東電は社員がどのような職務にたずさわっていたかについて詳細を明らかにしていないが、意識的にルール違反する社員が原子炉の運転にかかわっていたとしたら、重大事故を招きかねない」と危惧する。
さらに、終了したと報告していた安全対策工事のうち4件が未完了だったことも判明。6月に計画していた7号機営業運転再開のスケジュールを白紙に戻さざるをえない事態に追い込まれていた。とどめとなったのが今回の核セキュリティ問題で、再稼働を容認する姿勢を示していた花角英世新潟県知事も「原子炉の運転を遂行するに足りる技術的能力が東電にあるのかを疑わせる」とお手上げだ。
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