テロ対策不備、東電に原発運営の資格はあるか 侵入検知設備の故障を放置、社員の不正も

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なお、規制委による重要度評価で「赤」とされたことにより、柏崎刈羽原発の状態は「事業者が行う安全活動に長期間にわたる、または重大な劣化がある状態」である第4区分とされた。今後の検査で新たな問題が見つかった場合、「プラントの運転が許容されない状態」とみなされる第5区分となる可能性もある。

今般の検知設備の問題は規制庁の検査により判明した。そのことを理由に、更田豊志規制委委員長は「(2020年4月にスタートした)新検査制度が機能したあかしだ」と力説した。

東電の説明内容を不審に思った更田氏の指示により、現地の規制事務所の検査官らが休日の夜間に抜き打ち検査を実施。東電が代替措置と呼んでいた対策が「非常にお粗末だった」(更田氏)とし、核セキュリティ体制に根本的な欠陥があることを突き止めた。

規制庁は長らく東電の対応に疑問を抱かなかった

ただし、規制庁を手放しで評価できるものではない。代替措置を講じていれば、故障が多発していてもその詳細を報告しなくてもよいとする東電の対応に規制庁も疑問を抱いていなかった。東電社内でも核セキュリティ分野は現場任せになっており、柏崎刈羽原発の所長にもきちんとした報告が上がっていなかった。

他方、再稼働の前提条件となる新規制基準に基づく原子炉設置変更許可や保安規定の認可手続きはすでに終了していた。2021年春には7号機の原子炉を起動させ、6月には営業運転を実現する手はずだった。

不正入室問題については2020年9月に規制庁が東電から報告を受けていながら、規制委に報告したのはその4カ月後。マスコミ報道の直前だった。その間に保安規定が認可されたが、事前に問題が知られていたら、認可手続きにストップがかかっていた可能性もある。

再稼働が白紙となった東電は今後、追加検査での指摘内容によっては、原発事業の継続に支障が生じる可能性もある。柏崎刈羽原発の再稼働によって稼いだ収益を福島原発事故の賠償や廃炉費用に充てるという算段も危うくなる。

原発への不信感がさらに高まれば原発の新増設の道も絶たれ、カーボンニュートラル政策の中軸に原発を据えようという経済産業省のもくろみも水の泡になりかねない。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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