「省エネ住宅」を選択する人は本当に増えるのか 建物のみならずソフトの改善もカギになる

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減少要因として、コロナ禍での需要マインド低下があるが、それ以上に相続税改正などといった貸家市場を下支えしていたトレンドの一巡、消費増税の駆け込みが比較的影響しなかったこと、空家・空室に対する社会的な危機意識の高まりなどがある。

浴室の様子。浴槽内部に断熱素材が入っているためお湯が冷めにくく、追い炊きによるエネルギー消費を減らす効果がありZEH化に貢献している(写真:筆者撮影)

このような状況下で賃貸住宅の新規建設を安定的なものにするには、これまでにない新たな付加価値、コンセプトを有する賃貸住宅を開発、販売することが重要になり、その代表格となるのがZEH賃貸というわけである。

つまり、積水ハウスがZEH賃貸の普及に注力している理由は他社との差別化であり、あえて言うなら「新たな市場づくり」が目的とも考えられる。

そのため、ただZEH賃貸を建設するだけでなく、入居者募集にあたっての情報提供にも注力している。

物件検索で省エネ関連情報も充実

積水ハウスは賃貸住宅の管理仲介などを行う「積水ハウス不動産」(全国6社)を有しているが、その賃貸住宅検索サイトにはZEHはもちろん、「断熱等性能等級4」、「遮熱断熱複層ガラス」などという評価、選択項目が設けられている。

もっとも、省エネ関連の項目を設けている賃貸住宅検索サイトは、筆者が確認したところ大手ハウスメーカー系に限定されている。ちなみに、耐震等級などを項目に入れているケースもある。

ZEHなど省エネを重視してきたのはハウスメーカーを含む戸建て事業者でありノウハウがあるため、これは当然のことだと思われるが、その中でも情報が突出して多いのが積水ハウスであり、そこに差別化の狙いが強く表れている。

ZEHの供給は比較的普及が進んでいる新築戸建て住宅でも、全体的には政府の目標(2020年に新築の半数)に及んでおらず、ましてや賃貸を含む共同住宅では取り組んでいるのは非常に少ないのが現状だ。

しかし、国は戸建て住宅については義務化の方向性を持っており、2020年は見送られたが近い将来そうなる可能性がある。おそらく、それは共同住宅についても同様で、そのためによりZEHの適用要件を下げた仕様も設定(それでも一般的な建物よりは省エネ性が高い)している。

いずれにせよ、ZEHを含む省エネ賃貸住宅の普及は今後確実に進むものと考えられるが、それを加速するためにはハード(建物)だけでなく、冒頭の検索サイトも含めたソフトの部分へのてこ入れも必要だろう。

田中 直輝 住生活ジャーナリスト

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たなか なおき / Naoki Tanaka

早稲田大学教育学部を卒業後、海外17カ国を一人旅。その後、約10年間にわたって住宅業界専門紙・住宅産業新聞社で主に大手ハウスメーカーを担当し、取材活動を行う。現在は、「住生活ジャーナリスト」として戸建てをはじめ、不動産業界も含め広く住宅の世界を探求。

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