「省エネ住宅」を選択する人は本当に増えるのか 建物のみならずソフトの改善もカギになる

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積水ハウスでは、ZEH賃貸の供給に業界でもいち早く取り組んでおり、2020年度の年間受注実績は2976戸。第 5 次中期経営計画(2020年~2022年)で掲げた年間受注戸数2500戸を前倒しで達成したとしている。また、累計受注戸数(2017年~)では3806戸に達しており、いずれも業界ナンバーワンの供給実績だ。

公開された住戸のリビング(写真:積水ハウス提供)

同社が上記のようにZEH賃貸に注力するのは収益性が高いからだ。「シャーメゾン」全体での1棟あたりの受注金額は年々上昇しており、2020年度で1億1796万円に達している。これはより高付加価値な建物の増加が寄与したものだ。

中でもZEH賃貸はその最たるもの。見沼区の物件は蓄電池の設置以外にもホテルのような内廊下、HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)なども採用しており、建設費や家賃(いずれも非公開)が相当高額であることは容易に想像できる。

重視されるESG経営の視点

注力する理由にはESG経営の訴求もある。戸建て住宅では2019年度にZEH比率87%を達成しているが、賃貸住宅でも供給量を拡大することで、「環境貢献企業」としての認知度強化が図れるからだ。

建築主となる土地所有者などオーナーサイドにもこの視点からのZEH賃貸のニーズが高まっているという。「法人がZEH賃貸を建設するケースが多いが、それはその法人がESG経営に熱心だと評価される」(石田建一・常務執行役員環境推進担当)からだ。

賃貸住宅の経営はこれまで、個人や企業などが土地や資産を運用する目的のために建設され、投資と回収のバランス、いわゆる「利回り」が重要視されてきただが、そこにESG経営を含む環境配慮という視点が加わりつつあるわけだ。

ところで、賃貸住宅市場全体を見ると、現在は非常に厳しい環境にある。国土交通省が1月29日に発表した建築着工統計調査報告(年計)によると、2020年の新設住宅着工のうち、貸家(賃貸住宅)は前年比10.4%減の30万6753戸となっており、3年連続の減少となっていた。

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