五輪「侮蔑演出」の辞任劇が違和感だらけのワケ 広がる波紋、個人の辞任で終わらせていいのか
「佐々木氏だけ批判され、辞任したらこの件はおしまい」なら、ガバナンスとしては正常とは思えず、組織として真相を究明しなければなりません。佐々木氏への批判を繰り返す人々も、それをあおるような報道をするメディアも、「木を見て森を見ず」の感が否めないのです。
渡辺直美さん不在で勝手に批判する人々
2つ目の違和感は、渡辺直美さんに対する一方的な目線。
渡辺さんは3月18日、所属事務所の吉本興業を通じて、「表に出る立場の渡辺直美として、体が大きいと言われる事も事実ですし、見た目を揶揄されることも重々理解した上でお仕事をさせていただいております。実際、私自身は、この体型で幸せです。なので今まで通り太っている事だけにこだわらず、『渡辺直美』として表現していきたい所存でございます。しかし、ひとりの人間として思うのは、それぞれの個性や考え方を尊重し、認め合える、楽しく豊かな世界になれる事を心より願っております」などとコメントしました。
このコメントをメディアはこぞって称賛。とりわけ情報番組のコメンテーターたちは、人間性の素晴らしさを称えるなど、絶賛の言葉を繰り返していますが、ここまで本質を突いた意見はほとんど見られません。
今回は最初の報道から一気に批判が広がるところまで、渡辺さん不在で勝手に事が進み、本人はほぼ置き去り状態のまま、佐々木氏はアッという間に辞任。はたして渡辺さんは佐々木氏のグループLINEをどう思っているのか。世間の人々に批判してほしいのか。最重要人物であるにもかかわらず、勝手に報じられ、批判が一気に過熱したことで、コメントしづらい心理状況になり、殊勝な言葉に終始するしかなかったように思えてならないのです。
渡辺さんほどの芸人なら、もしかしたら笑いを交えたコメントをしてくれたかもしれないし、ネガティブなムードを断つことができるとしたら彼女だけでしょう。しかし、アッという間に批判が広がり、その中には渡辺さんのことを思って発言している人もいるほか、渡辺さん個人を超えてぽっちゃり体形の女性全般を含めた話に飛躍していることもあって、単純に「批判はやめて」と言ったり、笑いを交えたりしづらい状況になっていました。
渡辺さんにしてみれば、批判が過熱するほど芸がやりづらくなるし、共演者を戸惑わせてしまう。さらに、オファーを出すほうもリスクを恐れて敬遠されかねない。今回の件をリークした人も、批判的なメディアと世間の人々も、渡辺さんのことを思っているように見せかけて、実はほとんど考えていないのです。
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