ワクチン接種で活躍、シャープ製蓄冷材の実力 液晶の制御技術を応用、新たな収益柱を育成

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では、家電大手のシャープが電気を使わない蓄冷材を開発しているのはなぜなのか。シャープ研究開発事業本部材料・エネルギー技術研究所の内海夕香課長は「液晶の制御技術を応用しているから」と話す。

固体と液体の中間の状態にある液晶は、気温の高い夏には液体化せず、冬は逆に固まらないことが求められる。液晶パネルメーカーとして長年にわたって研究開発を続けてきたシャープには、「(物質の)状態が変化する温度を制御する技術があった」(内海氏)。定温蓄冷材の主成分は水だが、さまざまな化合物を配合させて融点を氷点下24℃~28℃の範囲で調整できるようにしている。

既存技術を応用、収益柱に

シャープは過去の液晶パネルへの大規模投資が裏目に出て、2010年以降、数千億円単位の最終赤字を何度か計上してきた。

3℃適温蓄冷材は摂氏3℃で溶け始め、固体から液体に変化する(写真:シャープ)

2016年8月には台湾の鴻海精密工業傘下に入って経営改革を続けてきた。既存の家電や液晶事業の採算改善が進み、2018年3月期以降は最終黒字が定着しているが、新たな収益源が育っていないこともあり、業績は足踏み状態が続いている。

そこでシャープが注力しているのは、既存事業で培った技術の組み合わせや応用で新分野への進出を加速し、新たな収益柱を育てる戦略だ。2020年9月には情報通信技術と高画質映像技術を組み合わせて医療分野に本格参入する方針を示した。

適温蓄冷材の今後の活用について、内海氏は「人体を冷やす際に氷では冷たすぎる場合があるので、12℃適温蓄冷材で快適に冷やすこともできる」と説明し、今後は手のひらに適温蓄冷材を当て、体を冷ますような暑熱対策などに用途を広げていくと話す。コロナ禍で、シャープが得意とする液晶技術が意外な形で生かされることになった。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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