ワクチン接種で活躍、シャープ製蓄冷材の実力 液晶の制御技術を応用、新たな収益柱を育成

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従来の医薬品向け定温輸送容器は、いったん凍らせた蓄冷材が適切な温度に上昇するまで1~2時間かかっていたほか、冬の寒い時期などには適切な温度に上昇させるため保温する措置が必要になっていた。

これに対し、3℃適温蓄冷材は凍結直後に容器内に入れて使用できるため、待機時間が不要で、年間を通して同じ手順で運用することが可能だ。

スギヤマゲン機能容器事業部の藤井健介部長は「(シャープの適温蓄冷材は)従来の蓄冷材や蓄熱材を使用するよりも運用を非常にシンプルにでき、画期的だ」と話す。実際、蓄冷材を用いた医薬品輸送容器で待機時間を不要としたものは初めてだという。

シャープの社内ベンチャーが開発

2月に入り、スギヤマゲンは厚生労働省から新型コロナワクチンの移送用保冷バッグを4万個受注。この保冷バッグには、シャープの定温蓄冷材が保冷バッグ1個あたり4個使用される予定だ。

定温輸送容器セットには4枚のシャープ製蓄冷材が使われている(写真:シャープ)

シャープは12℃の蓄冷材も開発している。用途としては、2020年7月から首都圏を中心に展開しているパルシステム生活協同組合連合会の青果配達で本格採用されている。一般的に使われている、水を用いた蓄冷材は融点が0℃のため、野菜や果物に直接触れてしまい、低温障害が起きるケースがある。だが、最適な温度を保てる定温蓄冷材ではそのような心配はない。

蓄冷材を開発しているのはシャープの社内ベンチャー「TEKION LAB」だ。停電が多いインドネシアの冷蔵庫に搭載する蓄冷材を2014年に販売したのを皮切りに、酒類などを氷点下2℃で冷やす保冷バッグなど、輸送向け以外の用途を拡大させてきた。

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