中国はなぜ弊害大のGDP目標を止められないか 地方当局者を評価する代替指標がみつからない
GDP成長率目標の達成だけを念頭に置くやり方は環境破壊を招くとの認識が広がり、中央政府は10年余り前から成長目標への過度な依存に警鐘を鳴らしてきた。ただ、成長率を優先する人事評価制度もあって、無駄が多い投資プロジェクト推進で国家目標を上回る成果を出そうとする地方当局者の考えは変わらなかった。
中国人民銀行(中央銀行)貨幣政策委員会の馬駿委員など有力な当局者は、国内経済の債務水準引き下げの一環として成長率目標の恒久的廃止を主張。JPモルガン・チェースや野村ホールディングスなどは成長目標が今年も見送られると見込んでいた。
だが、全人代開幕の数日前になって国務院発展研究センターの張立群研究員が国営メディアとのインタビューで、「一定の成長ペースがなければ、中国経済の質は支えを得られない」と反論した。
なぜ今年の成長目標は6%超と低いのか
成長率目標が設定されたとはいえ、6%超という今年の目標は相当低い。昨年前半はコロナの影響で景気が落ち込んでいた反動もあり、現在のGDP水準を維持するだけでも達成は容易だ。ブルームバーグのエコノミスト調査では今年は8.4%増が見込まれている。
成長目標を低めに設定したことで、より「持続可能な発展」の実現に向けた中長期的な目標に軸足を置くよう当局者に促すことができると李首相は説明した。
カーネギー清華センターでフェローを務めるマイケル・ペティス氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「8%よりもはるかにましな数字だと思う」とし、「8%を追求していたらとんでもないシグナルになるところだった。6%なら質の高い成長にも対応できる」と話した。
成長率目標が今年設定されたことは、地方当局者を評価する代替指標がいかに見つけにくいかも浮き彫りになっている。経済と環境目標を組み合わせる指標を地方で試してきたが、採用には至っていない。
しかし、成長目標の全面廃止はできなくても重要度を下げることは可能だ。習近平氏が12年に共産党総書記に就任した翌年、当局者の昇進を管理する中央組織部は人事評価でGDP成長率に単に頼るなとくぎを刺した。それ以降、党機関紙のGDPへの言及が大幅に減少している。
原題:Why China Can’t End Its Romance With GDP Growth Target(抜粋)
著者:Tom Hancock
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